Q1.
ベトナムに進出するためには、大きく分けると4つの方法があります。①直接投資(現地拠点の設立)、②間接投資(既存会社への出資)、③BCC契約(事業協力契約)、④国境を超えるサービス提供です。それぞれの進出方法のメリット・デメリットがあり、事業の種類や目的によって選択が異なります。
どんな場合でも①直接投資(現地拠点の設立)は推奨できません。特に初めて海外進出する場合、現地拠点を持つことは負担となり、ビジネスが失敗した際、当該拠点の閉鎖手続きも複雑です。一方、ベトナム市場がある程度認識され、コーポレートガバナンスを統制しながら独立で事業を展開し、かつ進出事業が100%外資オープンである場合、現地拠点の設立をお勧めします。
現地法人や支店を設立する際にはIRC(投資登録証明書)が必要となりますが、展開する事業の種類によってはIRC申請時に外資規制がある場合があります。現地会社の設立には、1人有限責任会社、2人以上有限責任会社、株式会社などいくつかの選択肢がありますが、会社ごとに独自の選択肢があります。出資者の状況を考慮する必要があります。また、設立後の事業展開を見据えて事業組織を設計する際には、適切な組織形態を選択する必要があります。
支店や駐在員事務所の開設などさまざまな進出方法がありますが、ベトナムは一部業種を除き支店の市場を開放しておらず、原則として営業活動は行えないため、 この点には留意が必要です。
Q2.
ベトナムに進出するためには、現地に拠点を設ける方法(直接投資)のほか、大きく分けると3つの方法があります。①間接投資(既存会社への出資)、②BCC契約(事業協力契約)による方法、③国境を超えるサービス提供による方法です。それぞれの進出方法のメリット・デメリットがあり、事業の種類や目的によって選択が異なります。
①間接投資(既存会社への出資):持分・株式の購入による方法について
証券取引や、上場していない会社の持分・株式を既存の社員・株主から譲り受ける、または新規発行分の購入による方法です。拠点を設立する手続を行う必要がない上、対象会社の51%以上の持分・株式を保有する場合、実質的な拠点を有するといえます。
現地法人や支店を設立する場合、IRC(投資登録証明書)やERC(企業登録証明書)の申請が必要となりますが、間接投資の場合は、IRCの代わりに、持分・株式の購入に関する承認書を取得する必要があります。その後、有限会社の場合は、ERCの変更手続が必要です。
②BCC契約(事業協力契約)による方法について
現地拠点を設立せず、ベトナム現地パートナーと契約を締結して事業を展開する方法です。
BCC契約の利点は、現地パートナーが事業主体となることから、外資規制が厳しい分野において外資規制を直接的に受けないという点にあります。他方で、事業主体が現地パートナーとなってしまうことから、利益分配や事業に対するコントールを契約に定めなければならないことが懸念されます。BCC契約を締結する際は、BCC契約の登録手続を行う必要があります。
③国境を超えるサービス提供による方法について
ベトナムに現地拠点がなくても、ベトナムの使用者とサービス提供契約を結び、国境を越えてサービスの提供を受けることができます。しかしながら、すべての事業でこの方法で行えるわけではなく、許可されている事業例としては、法務サービス、会計サービス、建築サービス、技術コンサルティングサービス等があります。この方法での進出を検討する場合は、ベトナムがWTO(世界貿易機関)に加盟する際に批准したWTOコミットメントを確認する必要があります。
Q3.
①輸入権の登記
輸入を行うための資格が必要です。外資企業に対しては、IRC(投資登録証明書)におけるプロジェクトの目的として輸入権を登録し、ERC(企業登録証明書)手続における事業も登録する必要があります。
②輸入製品に関する規制
ベトナムへ輸出する場合、まずその品目がベトナムの輸入規制品目に該当しないことを確認する必要があります。
輸入規制品目は、多くの外国貿易管理法を詳述する政令 69/2018/ND-CP の付属付録 Iに掲げられており、武器だけでなく、古着、電気機器、医療機器、自転車、バイク、車などが輸入規制品目に該当します。
次に、紙幣やタバコの製造に関連する物品などは政府が指定した企業でなければ、輸入できません(同政令別表Ⅱ)。
また、化学物質等は輸入する前に輸入許可書を取得する必要があります(同政令別表 III)。
その他、日本国内においても外為法に関連して輸出管理令に挙げられている品目について、許可や承認が必要となる場合がありますので、ベトナム法のみならず日本国内法の確認も必要です。その他、個別の法令や条約等により、輸出入に際して事前に手続を踏まなければならない場合もあります。
③通関手続き
輸入前に、通関申告に関する書類を準備し、通関申告を行わなければなりません。通関手続きは、インターネットを通じて行うことができますが、申告内容によっては実際の通関申告書類の審査を行う可能性があります。また、輸出加工企業の場合、最初の輸入を行う前に、通関支局の審査を経る必要があるため、そのような場合は事前に通関支局へ連絡が必要になります。
④輸入税
輸入品目(HSコード)及び輸入目的(輸出加工、ベトナム国内に販売、自社使用等)によって、輸入税及び付加価値税の税率やその他の規定が異なりますので、事前に検討されることが望ましいでしょう。
Q4.
①ベトナム代理店の資格
代理店契約の締結する当事者は商人である必要があります。
商人は商業登記が義務付けられているため(2005年商法第6条第1項)、日本企業は代理店契約を締結する前に代理店契約の相手方の商業登記を確認する必要があります。販売代理店としての資格を有していない者と契約を締結した場合には、販売代理店契約が無効となる場合がございますので、ご注意ください。
②代理店契約の様式、種類
代理店契約を締結する場合は、原則として書面による契約とされており(平成17年商法第168条)、FAXやデータ記録などの書面以外の方法による契約も認められています(2005年商法第3条第15項)。
法律で定められている販売代理店契約には、包括代理店契約、専属代理店契約、総代理店契約の3種類があります(平成17年商法第169条)。
包括代理店とは、代理店が完全に商品の購入や販売、あるいは顧客サービスの提供を行う形態です。
専属代理店とは、一定の地域において、当該代理店のみに商品の一部または、サービスの提供を行う形態です。
総代理店とは、総代理店が直属の代理店ネットワークを組織し、単品または複数の商品の売買、特定のサービスもしくは、複数のサービスの提供を行う代理店の形態です。
総代理店は、代理店ネットワークの全体を代表し、 提携した代理店は総代理店の管理下で副代理店として業務を行います。
③知財、秘密情報の保護
代理店契約の内容として、商標を中心とした知的財産権の利用について定めておいた方がよいでしょう。この場合、商標の利用範囲や時期、使用可能な地域等を定めておく必要があります。その他代理店契約時には製品に関するマーケティング戦略や販売データなどの情報のやりとりが考えられますので、秘密保持に関する条項が必要ですし、販売代理対価に関する定めなども検討する必要があります。
④独占代理店契約のデメリット
ベトナム側の代理店は、独占での市場開拓を希望することが多く、独占代理店契約の提案を受けることが少なくありません。代理店の実績や販売能力が不透明な場合やベトナム市場にまだ慣れてない段階においては、いきなり独占代理店とするのではなく、実績を見てから契約を見直すタイミングなどで独占性の付与を判断されたほうが良いでしょう。
⑤売上管理、在庫管理
代理店から製品の対価を事前に支払ってもらえる場合は問題ありませんが、一般的には、製品の販売後に対価を支払うという合意になります。その場合、売上管理、在庫管理が最も重要になります。代理店の一方的な報告では不十分なため、直接又は独立した第三者である専門家による査察や監督を頻繁に行う必要があります。
Q5.
①移転できる技術の範囲
ベトナムの技術移転法(07/2017/QH14)では、移転可能技術には次のようなものが挙げられます(法4条)。
これに対して、法11条は移転禁止技術を定めており、次のようなものが挙げられています。
また、これら移転禁止技術への該当可能性がある場合、政令(76/2018/ND-CP)により、更に具体的に禁止技術の内容を窺い知ることができます。
両者の中間に位置するものとして移転制限が定められている技術があり、法10条では次のような技術が挙げられています。
②移転する方法
技術移転法の第5条では、技術移転や技術による出資に関する契約の締結が義務付けられています。また、投資プロジェクトの移転、商標の譲渡、知的財産権の譲渡、機械、装置の買い付けに際しては、営業秘密、技術情報、または技術ノウハウや手順、解決策、技術仕様、図面、技術的な概要、数式、コンピュータープログラム、データ情報などは契約書、契約の条項や付属書、または投資プロジェクトのファイルに適切に記載されなければなりません。
③登録手続
移転制限技術を譲渡する場合、譲渡者は譲渡許可を申請し、承認または譲渡が許可される必要があります。投資政策や投資決定の段階で技術の評価や協議が行われた投資プロジェクトの技術移転については、技術移転の承認は必要ありません(移転法第28条)。
④契約金額の妥当性
移転価格を目的とする関係者間の技術移転契約を締結する事例が過去に少なくなく、そのため、関係者間の技術移転契約に対して、税務査察の際、契約額が妥当かどうかという点について厳しく審査されます。当該契約額の妥当性を証明できない場合は、税務局の市場価格評価基準に基づき、価格を強制される可能性があります。そのため、技術移転契約を締結する時は、契約額が妥当かどうか、それを証明できる根拠等を事前に整備する必要があります。
Q6.
統合文書 No. 11/VBHN-VBQH 2022 知的財産法により、工業所有権オブジェクトを使用する契約を締結する際には、主に次の点に注意する必要があります。
①契約の種類
工業所有権の行使に係るライセンス契約は、次の種類があります(第 143 条 統合文書 No.11/VBHN-VBQH 2022 年知的財産法)
②コンテンツ契約
工業所有権オブジェクトの使用契約には、以下の内容を規定する必要があります(統合文書 No.11/VBHN-VBQH 知的財産法 2022 第 144 条)
③工業所有権譲渡契約書を登録する
商標を使用する契約を除き、登録に基づいて確立された工業所有権オブジェクトの使用契約は、工業所有権に関する国家管理機関に登録されなければならず、第三者に対して法的に有効であることに注意する必要があります。(2022年知的財産法第148条統合文書No.11/VBHN-VBQH第3項)。
Q7.
ベトナムにおける外資規制は、投資法 (61/2020/QH14)及び関連する複数の投資関連政令によって規定されています。外資規制の内容について、主に以下の点に対して注意を払う必要があります。
①投資手続に関する規制
外資企業がベトナムに進出するためには、ベトナム投資法に定める手続を行う必要があります。投資の手続は、投資の形態(経済組織設立への投資(法22条)、経済組織への出資、株式、持分の購入の方式による投資(法24条)、PPP(Public-Private Partnership)契約(27条)又はBCC(Business Corporate Contract)(法29条))により異なります。それぞれの投資形態による簡単な手続きは、以下の通りです。⁂注:ハイライン箇所は、投資手続における外資企業特有の手続きとなります。
【経済組織設立への投資】
投資登録証明書(IRC)の取得
↓
企業登録証明書(ERC)の取得
↓
企業設立後の各種手続
↓
事業に関するライセンスの取得(必要に応じ)
【経済組織への出資、株式、持分の購入の方式による投資】
経済組織への出資、株式、持分の購入の承認書取得
↓
社員の変更、株主の登録
【PPP】
投資プロジェクトの提案
↓
プロジェクトの提案審査→承認
↓
事業者の選定(入札)事業者選択結果の承認決定
↓
プロジェクトを実施するための法人設立(IRC、ERCの取得)
↓
PPPに関する各種契約の締結
【BCC】
BCC契約の締結
↓
BCC契約の登録
②出資割合の規制
外資企業が出資可能な最大の出資割合を確認するため、①WTOコミットメント及び②ベトナム国内法令を検討する必要があります。
WTOコミットメントにおいて、外資企業の出資割合を制限する事業として18事業が指定されています。例として以下のものがあげられます。
インターネットインフラなし通信サービス:65%以下
インターネットインフラあり通信サービス:49%以下
農業、狩猟、林業に関するサービス:51%以下
映画製作、発行、撮影:51%以下
道路運送業:51%以下
国内法令においても外資企業の出資割合を制限する規定があります。例として、商事銀行(50%以下)、警備・守衛サービス(50%以下)、価値評価サービス(35%以下)等があげられます。
③事業に関する規制
ベトナム投資法の規制に従う投資禁止分野
投資法第 6 条第 1 項により、(1) 投資法の付録 I に規定される麻薬関連事業、(2) 本法に規定される化学物質および鉱物、投資法の付録 II に規定される化学物質および鉱物に関連する事業への投資は禁止されています。投資法。 (3) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約の附属書 1 に規定する野生動植物の標本及びこの条約の附属書 III に規定する絶滅のおそれのあるグループ I の標本の取引 (4) 売春業(5) 人間、組織、死体、人体の一部、および人間の胎児の売買。 (6) クローン人間に関する事業活動。 (7) 爆竹の取引、および (8) 債権回収サービスの取引。これらの条件のいずれかに該当する場合、投資活動は許可されません。
条件付投資分野
投資禁止分野に該当しない場合であっても、常に自由な投資活動が行えるわけではなく、一部の分野においては、条件付投資分野として、投資活動に一定の制約が課せられることがあります。どのような分野が条件付投資分野に該当するかについては、投資法別表4を修正する法律(61/2020/QH14)中の別表IVにより確認することができます。条件付投資分野に該当する場合には、さらに個別法令の定めを確認し、具体的にどのような外資規制が行われているのか確認する必要があります。
投資優遇
外資規制ではないものの特定の業種、地域へ投資を行う場合には、税制面における優遇措置を受けることもできます。具体的な優遇措置の定めは、投資法及び中小企業支援法(04/2017/QH14)に置かれており、例えば、ハイテク業種(投資法16条1項a)、職業教育(同項i)といった業種があげられます。また、投資優遇地域として、工業団地や経済区などがあげられます(投資法16条2項b)。
④投資関係の報告等に関する規制
外資投資家が、ベトナムで投資プロジェクトを実施する際、投資プロジェクトの活動状況を報告する必要があります。現在オンラインで報告書を提出することができ、月間報告書、6か月間報告書および年間報告書があります。
Q8.
当初、ベトナムではWTOコミットメントにより、外資規制を敷いていましたが、2015年より当該制限が撤廃され、現在では外資規制のない分野となっています。そのため、ベトナムにおける飲食業では外資特有の規制はありませんが、現地企業と同様に食品衛生法等の現地規制により各種証明書等の取得が必要となります。
ベトナムでの飲食業は、食品衛生法5条及び37条により食品安全証明書の取得が必要で、取得した食品安全証明書の有効期間は3年とされています。当該証明書を取得するためには、各種経営事業に沿った条件が規定されており、これを満たす必要があることおよび食品事業登録者であることが求められています(法34条)。なお、政令(15/2018/ND-CP)により、一部の包装食品事業者などは例外的に証明書の取得が不要とされる場合があります。
また、飲食事業において酒類を提供する場合には、上記の証明書に加え、酒類小売業免許が必要となります(政令(第105/2017/ND-CP)14条)。
Q9.
ベトナム投資法(61/2020/QH14)によれば、不動産事業は条件付き投資分野に属します(付録IV、セクション101)。具体的な外資規制の内容は不動産事業法(66/2014/QH13)に規定があり、主として同法2章の既存の不動産事業及び3章の将来形成不動産事業に対して外資規制が定められています。
不動産事業に対する規制
不動産事業については外資特有の規制が設けられており、次のような方式でなければ事業を行うことができません(法11条3項、54条2項)。
不動産事業は条件付き投資分野であるため、不動産事業を行う会社設立手続きでIRC(投資登録証明書)を申請する際、計画投資局は関係政府機関からの聴聞手続きを義務付けています。そのため、外資規制のない企業に比べて手続きに時間がかかります。さらに、これは外資に関する特定の規制ではありませんが、これらの事業分野に参加する企業は、政令 02/2022/ND-CP の第 4 条第 2 項を満たす定款資本金が必要とされています。
加えて、不動産事業を行う企業の設立と不動産開発プロジェクトを申請する手続は別個独立の手続であることにご留意ください。
不動産サービス事業に関する規制
上記と異なり、不動産サービス事業として扱われる、不動産仲介サービス、不動産取引サービス、不動産諮問サービス、不動産管理サービスには、資本金規制を含め外資特有の規制は見られません。しかしながら、不動産サービス事業を営む上で欠かすことのできない規制があります。不動産サービス業においては、企業(法人)設置義務及び不動産仲介証明書の取得者設置の義務があり、その他業種に応じた規制が敷かれています。
【不動産サービス事業に対する規制一覧】
※こちらの表は横スクロールしてご覧ください
仲介サービス | 取引サービス | 諮問サービス | 管理サービス | |
---|---|---|---|---|
企業設置義務 | 原則あり(法62条項) | あり(法69条項) | あり(法74条項) | あり(法75条項) |
2名以上の仲介証明書取得者設置の要否 | 要(法62条項) | 要(法69条項) | 不要 | 不要 |
その他規制 | - | 活動規則、物的基盤、活動要求等に応える技術が求められます(法69条3項) | - | 対象が共同住宅または目的混合住宅の場合、関連法令の規定に適合する必要があります。(法75条1項) |
対象が共同住宅または目的混合住宅の場合、関連法令の規定に適合する必要があります。
(法75条1項)
*不動産仲介証明書:法68条に規定され、建設局が発行する有効期間5年の発給書面であり、取得には不動産仲介に関する試験に合格する必要があります。
Q10.
建築サービスにつき、ベトナムのWTOコミットメントでは、WTO加盟国の法人であれば、特段の外資規制なく同事業を行うことができるとされています。ここでいう建築サービスとは、建築及び関連事項に関する支援、アドバイス及び勧告サービス、ビル及びその他の構造物の建築設計サービス、建設が最終設計と使用に沿って建設されるよう建設段階において依頼人に対して行うアドバイス及び法的支援サービスなどを指し、実際の建設作業は含まれません。もっとも、実際の建築業務である高層ビル、土建の建設施工や架設の設置、高層ビル工事の完成業務などについても、現在は、建築サービスと同様にWTO加盟国の法人であることを除き、外資規制はありません。
ベトナム建設法では、建設業務に応じてI級、II級、III級に分類され、各級に応じた条件や事業範囲が設定されています。また、実際の建設作業においては、建設作業担当者について基準を満たす訓練施設で取得した卒業証明書及び訓練証明書が要求されているなど(建設法148条1項)、外資規制の他にも国内法規制がある点に注意が必要です。
Q11.
ベトナムは教育関連事業において、WTOコミットメントにより技術、自然科学、テクノロジー、経済学、経営管理、経営科学、会計、国際法律又は語学研修の分野において市場開放を行っています。中等教育、高等教育、成人教育、その他語学の分野を含む教育サービスの項目が挙がっており、中等教育サービス以外のサービスについては、複数の外資規制が設けられています。具体的には、教育に用いるプログラムにつき、教育訓練省の承認が必要とされており、教育事業において勤務する外国人の教員は、5年間の実務経験と、ベトナム教育訓練省から認証を受けている必要があります。また、進出形態においても、合弁会社の形態のみ認められています。これに対して中等教育サービスは、このような制限は設けられていません。
外国投資教育機関を規制する政令 86/2018/ND-CP の第 28 条によると、次のようになります。
上記の教育機関と異なり、職業訓練事業を行う場合には、WTOコミットメントにより、その他教育サービスに含まれるため、合弁会社の設立の方法により事業を行うこととなります。 職業訓練プロジェクトの場合、施設要件は政令 143/2016/ND-CP によって規定されています、最小の土地利用面積が職業教育センターに対して1000m2、職業中級学校において、都市部では10000m2、郊外の場合は倍の20000m2、職業大学においては都市部で20000m2、郊外で50000m2が必要です。資本金においても職業教育センターの場合は、50億VND、職業中級学校に対しては500億VND、職業大学においては1000億VNDが必要とされています。
最後に、教育分野においては、ベトナム全体の教育に関する計画に合わせる必要があります。事業を行う場所、投資家の能力の判断、社会的な必要性等について教育管理機関により厳格な審査が行われる運用がなされており、最終的にベトナムで教育事業を行うことができるかどうかについては官庁の裁量に委ねられています。
Q12.
ベトナムはWTOコミットメントにおいて、広告事業への外資参入には事業協力契約(BCC)を締結する方式または合弁会社設立の方式による参入のみを認めています。他方で、加入時においては外資資本率に制限がありましたが、現在はこれが撤廃され、資本比率に関する制限は現在ありません。
現地での広告規制としては、広告法等により規律されており、たばこ、アルコール濃度が15度を超える酒類など広告禁止物品や、幼児向け栄養品に関する広告には一定の条件が設けられているなど、広告対象によって別途制限されています。
Q13.
ベトナムの金融業に関するWTOコミットメントにおいては、外国資本による駐在員事務所・支店の設置、及び現在では100%外資による銀行設立も認められていますが、100%外資による銀行設置の実例はありません。金融業のうち、ファイナンスリースにおいてもいずれの進出方法も認められています。なお、合弁の形態による進出の場合は出資比率が50%未満でなければなりません。さらに、ベトナム信用機関に関する法律第 6 条第 4 項によれば、次のようになります、外国金融機関の組織形態は有限責任会社でなければならず、株式会社の形態は認められていない点に注意が必要です。
ベトナムにおいて金融業を行う場合は、金融業に関するライセンスの取得及び金融業の登録を行わなければならず(法24条)、同法26条2項に営業開始要件が定められているほか、資本金にも規制が置かれています。資本金に関する規制では、政令(86/2019/ND-CP)2条に定めが置かれており、商業銀行の場合は3兆VND、制作銀行の場合は5兆VND、協同組合銀行の場合は3兆VND、外国銀行の場合は150億USD、金融会社の場合は5000億VND、金融リースで1500億VND、マイクロファイナンス機関で50億VNDとされています。
保険業については、WTOコミットメントにより支店設立が認められているほか、ベトナム保険業法105条3項において、外国の保険有限会社及び保険仲介有限会社がベトナムに駐在員事務所を設立することが認められています。ただし、駐在員事務所は保険事業を行うことはできません。
また、ベトナム保険業法においては、保険業運営ライセンス取得には、外国の保険事業又は仲介事業が適法に運営され、かつ、通常の財政状態にあることや、資本金拠出について直接の金銭による拠出が求められており、他の法人や個人による委託投資資本を利用することができません。その他、定款資本の10%を超える出資を行う場合、ライセンス申請の直近3年前の期間に利益を伴う事業を行っている必要があるなど、財政の安定性に関する各種規制が設けられています(第 106 条第 2 項、政令 73/2016/ND-CP、第 6 条、第 11 条、第 63 条など)。出資者の属人性についても規制があり、ベトナムでの進出分野において7年以上の事業経験が必要であること、また、外国企業がライセンスを申請する場合には、総財産がライセンス申請の前年に20億USD以上を保有している必要があるとされています(政令 73/2016/ND-CP の第 7 条)。
Q14.
劇場、ライブショー、サーカスなどのエンターテイメントサービスについては、WTOの条約により合弁事業の設立が認められており、外国資本の出資比率は49%を超えてはならないと定められています。
映画製作や発行サービスについては、ベトナム政府の検閲がWTOコミットメントに記載されており、また進出形態も外資規制として合弁会社の設立又は事業協力契約(BCC)の方式でなければなりません。なお、合弁会社設立の場合、外資資本は51%以下が求められています。ベトナムの法律では、製品にはコンテンツ承認ライセンスが必要です (第 1 条、第 14 項、点 1、政令 15/2016/ND-CP)、制作物を利用する前に指定のラベルの貼付が求められています(政令 15/2016/ND-CP の第 1 条、第 14 項、点 5)。
電子ゲーム事業の営業については、WTOコミットメントにより、BCCの方式又はベトナム政府により許認可を得ている企業との合弁会社設立の方法による進出が認められています。この場合、外資資本は49%以下とされています。ビデオゲーム事業についてはベトナム法において、小中高等学校から200メートル以上離さなければならない距離制限や、設備基準、営業時間基準のほか、賭博性のある電子ゲームの禁止など各種規制が置かれています。(政令 72/2013/ND-CP の第 35 条第 2 項、点 b)。
外国人を対象とした景品を伴う電子ゲーム事業においては、日越投資協定より、ベトナム政府の許認可が必要とされています。また、事業運営者は外国の者に限られています。事業運営には政令(86/2013/ND-CP)19条などにより、高級観光施設を有する外国企業であり、経営拠点に対する条件を満たす必要や、事業管理者の3年の事業経験や大卒資格、資本金規制として2000億ベトナムドンなどの規制が置かれています。
Q15.
ベトナムは、WTOコミットメントにおいて、病院の設立に関し、外資100%の病院の設立かベトナム企業との合弁の方法又はBCC(事業協力契約)締結の方法による進出形態を認めており、その場合の最低資本金として、病院の場合に2000万USD、総合診療室の場合に200万USD、専科治療所の場合に20万USDが必要とされています。
ベトナムで医療施設を設立する場合、医療検査および治療に関する法律第 49 条に従い、管轄当局から運営許可を取得する必要があります。 ビジネスライセンスは、保健省が発行する健康診断および治療施設の基本的な品質基準を確保する必要があります。
診察・治療を行うには開業免許が必要です。また、この条文の詳細規定である政令(155/2018/ND-CP)11条5項には、総合病院である場合少なくとも30床、専門病院の場合は20床、専門病院においては10床以上のベッドの設置や、年間を通して勤務する従業員数が全従業員の半数を占めることなどの規制が置かれています。また、医療従事者には資格が必要であり、資格認定が必要となる医療従事者の種類は、医師、看護師、助産師、技術員などが挙げられています(法17条)。
Q16.
直接投資(新規設立)と間接投資(M&A)という大きく二つの方法に分かれます。
直接投資(新規設立)の場合、現地法人設立、支店設置、駐在員事務所設置の3つの方法があります。件数としては現地法人設立が最も多く、法人の種類としては、1人有限会社、2人以上有限責任会社、株式会社の3種類がありますが、現状では有限責任会社の設立が多い傾向にあります。
現地法人、支店、駐在員事務所の選択によって設立手続きが異なりますが、投資関係の手続き(IRC(投資登録書証明書)、支店活動許可証または駐在員事務所活動許可証の取得)を行わなければなりません。そのため、直接投資(新規設立)は、間接投資(M&A)と比較して時間がかかります。
上記の行政手続き時間の問題や、外資規制(特に事業に関する制限や不動産の取得に関する規制)を避けるため、M&A(間接投資)を利用するケースが多くあります。過去の多くの事例において、①既存会社の購入、②株式購入及び新規会社の分割という方法により、現地法人を取得しています。
Q17.
ベトナムの法律では駐在員事務所には 2 つのタイプがあり、これら 2 つのタイプの違いは、ベトナム企業の駐在員事務所か外国企業の駐在員事務所です。 この違いにより、関係政府機関の権限も異なり、前者は計画投資省の管轄下にあり、後者は商工連盟の管轄下にある。 適用される法律や規制も異なります。 前者の場合、適用される法律は商法 (36/2005/QH11) であり、後者の場合、適用される法律は企業法 59/2020/QH14 です。 前者の場合については、詳細な手続きを定めた政令(07/2016/ND-CP)も存在するため、検討の際にはこれも参照する必要がある。 ベトナムに進出する日本企業の多くは外国企業の駐在員事務所の設立に興味を持っていますので、以下では外国企業の駐在員事務所について説明します。
駐在員事務所は法的地位を持たないという特徴があるため、設立された外国会社は無限責任を負わなければならず、原則として営利活動は禁止されています(商法第18条第1項)。 駐在員事務所の主な目的は、市場調査および貿易促進活動です(商法第2条第6項)。 また、駐在員事務所は、本社が締結した契約の代理人としての役割を果たしたり、本社が締結した契約の修正・補充に参加したりすることはできません(商法第18条第3項)ので注意が必要です。
駐在員事務所を設立するには、申請者は日本の国内法に基づいて営利会社として登録され、1年以上事業を行っている会社でなければなりません(政令07/2016/ND-CP第7条第1項および第2項)。 駐在員事務所を有する企業は、駐在員事務所を管轄する政府機関に直接、郵送または場合によっては電子的に申請することができます。 政府の規制によれば、設立許可は 7 営業日以内に発行されます。 (商法第11条第3項)。
駐在員事務所を設置する場合、所長は原則としてベトナムに居住しなければならず、一時的に出国する場合でも、本社の事前同意を得て代表者を任命しなければなりません(政令07/2016 /ND-CP第33条)。 また、取締役が無断でベトナムを30日以上出国した場合、本社は新たな代表取締役を任命しなければなりません(第5条)。 取締役はベトナムの会社または支店の法定代表者となることはできないことに注意してください(政令第 33 条第 6 項)。
Q18.
支店は、拠点の一つとして認められ、日本の会社を含む外資企業がベトナムにおいて設立することができます。支店を設立するためには、支店設立許可証を取得しなければなりません。支店設立許可証が発行される条件は、政令07/2016/NĐ-CP号8条に定める以下のとおりとなります。
その内、4の条件について、ベトナムが加盟しているWTOコミットメントに注意を払う必要があります。ベトナムはWTO加盟文書において、特定の業種に対してのみ支店設置を個別に認めることとしています。このような個別指定がなされている業種は、リーガルサービス(外国弁護士組織)、銀行サービス(外国商業銀行)など限られており、その他の業種についても支店設置が認められている業種が指定されていましたが、ベトナムのWTO加盟時(2007年)から概ね3年程度の期限が付されています。
現在外国企業が支店を設立することができる事業・分野は、以下の通りです。
【リーガルサービス】
Q19.
一人有限責任会社、二人以上有限責任会社、株式会社、合名会社などが挙げられます。それぞれ責任限度や出資者の数、機関構造に違いがみられます。
【概要】
ベトナムにおける企業の設立、管理組織、再編、解散および関連活動を規制する法律は企業法 59/2020/QH14 に定められており、有限会社 (法第 46 条および第 74 条) および株式会社 (第 111 条) が含まれます。パートナーシップ(第 177 条)および民間企業(第 188 条)。
会社を設立する場合は、有限会社や株式会社を設立するケースがほとんどですので、ここに焦点を当て説明します。
ベトナムの有限責任会社は、その出資者が1人か2人以上かで制度上区別されており、日本の合同会社とは異なるため注意が必要です。また、株式会社においても出資者を3名以上必要とするなど、日本会社法と異なる点が存在しています。
※こちらの表は横スクロールしてご覧ください
企業の種類/資者数 | 1人 | 2人 | 3人 - 50人 | 51人~ |
---|---|---|---|---|
一人有限責任会社 | O | X | ||
二人以上有限責任会社 | X | O | × 企業法46条1項) | |
二人以上有限責任会社 | × 企業法111条) | O |
このため、いわゆるジョイントベンチャー(JV)の手法にて設立する場合は必然的に二人以上有限責任会社か株式会社の形態を選択することとなり、100%独資で設立する場合は、一人有限責任会社とする場合が多いことになります。
【有限責任会社】
有限責任会社には、出資者が 1 名の単一社員有限責任会社(第 74 条)と、出資者が 2 名から 50 名までの 2 名以上の社員からなる有限責任会社(第 74 条)が含まれます。
2 名以上の社員がいる有限責任会社の組織構造には、社員会、社員会会長、取締役またはゼネラルディレクターが含まれます。
取締役会は会社の最高意思決定機関です。 次に、会員評議会のメンバーであり、会員評議会によって選出される会長です。 取締役会の会長は会社の取締役または総取締役を兼務することができ、会長は会社の日常の経営活動を運営する権利と義務を有する者であり、会長が主要な機関となります(第56条)。また、会社の取引において生じる各権利義務を行使する法定代理人を選任する必要がありますが(第13条第1項)、代表者には社長が選任される可能性が高いと考えられます。多くの場合。 法定代理人を任命する場合、企業は常に少なくとも 1 人の法定代理人がベトナムに永住していることを確認しなければなりません。法定代理人がベトナムを出国する場合、企業は法定代理人がベトナムに永住していることを確認しなければなりません。法定代理人の責任は次のとおりです。法定代理人の権利と義務の履行。 認可は法定代理人が行う必要があり、認可は書面で行われなければなりません(第14条第4項)。 また、社員が2人以上の有限会社の社員会を開催する場合には、出席社員の数が定款資本の65%以上を所有する必要があります(法第58条第1項)。企業: 取締役会は、会議での投票によって決議および決定を可決し (2020 年企業法第 59 条第 1 項)、出席したメンバーが出資総額の少なくとも 65% を所有している場合にのみ可決されます。 (本法第 59 条第 3 項 a) 例外的に、定足数が満たされない場合には、定足数を 50% に増やすことができ、定足数が満たされない場合には、会議の開催から 15 日以内に第 2 回会議を招集することができる。最初の議会の予定日(第 59条第2項a点)。
社員が 1 人の有限責任会社の組織構造は、社員が 2 人以上の有限責任会社の組織構造とは異なります。 オーナー、社長(オーナーが任命)、ディレクター/ゼネラルディレクター、ディレクター(非常勤または会長が雇う)を含む組織管理および運営モデルを持つ個人によって所有される1名構成の有限責任会社。 組織が所有する単一メンバーの有限責任会社には 2 つのモデルがあります。 (1) 当社の社長、取締役または取締役、(2) 取締役会、取締役または取締役。 上記の役職のいずれかを務める法定代理人が少なくとも 1 名存在する必要があります。 国有企業が所有する有限責任会社にも 2 つのモデルがあります。 (1) 会社の社長、取締役またはゼネラルディレクター、制御委員会、および (2) メンバー会、取締役またはゼネラルディレクター、制御委員会。 さらに、2020 年企業法は、国営企業が所有者である単一社員有限責任会社の場合、企業の所有者である取締役会の議長である法定代表者が少なくとも 1 名いなければならないと規定しています。会社の社長、取締役、またはゼネラルディレクター。 さらに、一人社員有限責任会社が代理店の 1 つとして取締役会の構造を適用する場合、取締役会は 3 名から 7 名までの任期 5 年以内のメンバーで構成され、取締役会によって任命されなければなりません。所有者が指定した所有物。 2 人以上のメンバーがいる LLC とは異なり、投資家以外もメンバーになれることに注意することが重要です。 また、会員総会においては、出席会員の3分の2以上の出席と過半数の賛成により決議・決議することができます。 定足数が不十分な場合に定足数を減らす規定はありません。 なお、取締役会に関する議事は、取締役会の議長が行うものであり、取締役2名以上の有限会社と同様です。
【合資会社】
株式会社の業務は企業法で別途規定されていますが、株式の公募の場合は公開会社に分類され(企業法第25条第1項)、次のように規制されています。以下: 証券法 (54/2019/QH14) に基づいて別途規制されており、上記の規制に準拠する必要があります。 なお、日本の会社法上の譲渡制限の有無は公開会社と私営会社を区別するものではないです。
株式会社の組織構造には、株主総会、取締役会、取締役兼常務取締役および監査役会が含まれます。 場合によっては、監査役会の設置が必要ない場合もあります。 監査役会の設置が必要とされない場合: (1) 株式会社の株主数が 11 名未満で、機関株主の保有株式数が 50% 未満、または (2) 株式会社の株式保有率が 20% 以上の場合取締役会のメンバーのうち5名は独立したメンバー(2020年企業法第155条第2項に規定される基準および条件を満たしている)であり、取締役会の下に監査委員会が設置されています。
取締役会の員数は3名以上11名以下とする。 取締役会のメンバー数は、会社定款(2020年企業法第154条第1項)に従って決定されます。 また、取締役会の議長には、原則として取締役が選任され、取締役会の運営に関する権利義務を有します(第156条第1項、第3項)。企業法の規定)。 一方、会社の日常業務を執行する取締役・部長は、取締役会の構成員のうちの一人または社外から任命されなければなりません(第162条第1項、第2項)。 当社に法定代表者が1名のみの場合は、取締役会会長または社長が法定代表者となり、定款に別段の定めがない限り、取締役会会長が法定代表者となります。取締役会が法定代表者となります。 2 人以上の法定代理人が選任されている場合、両当事者は法定代理人の完全な権利と義務を負います。 法定代理人になりたい場合は、有限責任会社の場合と同様にベトナムに居住する必要があり、出国時に書面で代表者を任命する必要があります。
監査役会は、取締役会、取締役または取締役社長の会社の経営管理を監督する機能を有し、株主総会に対して責任を負って与えられた職務を遂行します。 さらに、監査役会には 3 人から 5 人の監督者がおり、監督者の任期は 5 年を超えず、任期無制限に再選できます。 (2020年企業法第168条)
Q20.
ベトナムの有限会社には、その出資者の数により一人有限会社と、二人以上有限責任会社があります。また、一人有限会社の中には、出資者の代理人を複数名置き社員総会を開催するものとこれを置かない法人があります。そのため、細かく分類すれば3種類の有限責任会社があることになります。
ベトナムの有限責任会社に関する規制は主に2020年企業法に規定されており、有限責任会社は1名以上の投資家(会社所有者)または2名から50名を擁し、2名以上の構成員を有する有限責任会社と呼ばれます。 単一会員有限責任会社には 2 つのモデルがあります。所有者が権利と義務を行使する投資家の代表として任命されるか、組織が会議によって構成されます。 一般会員は投資家ではない人々で構成されます。
そのため、一人有限責任会社の機関構成は、
【出資者の権限について】
出資者の権限は、一人有限責任会社の場合は代理人、二人以上有限責任会社の場合は出資者が直接行使することとなります。ただし、一人有限責任会社の場合においても、会長や社員総会構成員に出資者自らが就くことで、直接権利義務に携わることも可能です。このような出資者の決定権限は、定款内容の決定、修正、補充や、投資に関する決定、利益の使用方法から解散の決定などに及んでいます(5条2項、76条)。特徴としては、一人有限会社における会社の会長よりも社員総会設置時の方が決議事項は広く、二人以上有限責任会社においては、出資比率(10%)に応じた決議権限(49条)や、定款で変更ない限り社員総会の専権とされている事項(59条3項)が含まれています。
なお、会社の法定代表者について、定款に定めがない場合、一人有限責任会社においては会社の会長、社員総会会長がこれに就任し(79条3項)、二人以上有限責任会社においては社員総会により決定される定款に記載された者が法定代表者に就任します。
社員総会を設置する一部の一人有限責任会社や二人以上有限責任会社においては、社員総会から過半数の決議により社員総会の会長を選任する必要があり、社員総会の会長は主に社員総会議事の進行に関する役割を担うこととなります(56条、80条3項)。
社長は、会社の日常的な経営活動を運営する者であり、執行機関としての役割を担っています(63条2項、100条2項)。社長の任命権限は、一人有限責任会社においては、会長又は社員総会の決議とされています(100条1項)。なお、会長、社長、法定代表者は兼任することができます(82条1項)。二人以上有限責任会社においては、社長は社員総会の決議により選任されます(59条2項)
監査人は会社の監査機関であり、単一社員有限責任会社にとって不可欠な機関です。 一方、2 人以上の社員を有する有限責任会社の場合、本法第 88 条第 1 項 b の規定によれば国有企業であり、以下の規定によれば国有企業の子会社である。この法律第 88 条第 1 項の規定を確立しなければならない。
それぞれの機関における任期は、一人有限責任会社における、社員総会構成員、社長、監査役、二人以上有限責任会社における社員総会の会長においては5年である旨法令上明記されています(2020年企業法第56条第、第80条第1項、第82条第1項)。他方で、一人有限責任会社における会社の会長、二人以上有限責任会社における会社の社長、監査役(会)の任期は明文化されていないため、定款で定めることとなります。
Q21.
ベトナムにおける株式会社について定めている法令は、主に企業法(59/2020/QH14)と証券法(70/2006/QH11)になります。証券法が適用されるのは、対象となる株式会社が公開会社に該当する場合であり、具体的には次のような項目に該当する株式会社となります。
これらに該当しない株式会社(非公開会社)には証券法の適用はなく、企業法を中心とする法令が適用されます。日本のように株式譲渡制限の有無で公開/非公開を区別していない点に注意が必要です。
企業法における株式会社は、株主が有限責任を負う、割合的な単位をとる株式を発行する企業(企業法111条1項)という点で、日本国内における株式会社と同様といえますが、株主として最低3人を要するため(企業法11条1項b))、1人株主の会社は存在しません。また、株式会社における機関構成は法令上次の2種類が定められています。
両者の違いは監査役会の有無にありますが、a)の場合は株主数が10人以下であり、各株主の株式保有率が50%に満たない場合には必須の機関ではなく、b)の場合は監査役会を常に設置する必要はないものの、取締役の20%以上が独立取締役でなければならず、監査については取締役会に直属する内部監査委員会を通じて行うとともに、各独立取締役に監査機能を果たすことが求められています(企業法137条1項b)。
株主の権利は、株式の保有率及び保有期間により異なり、議決権や配当受領、株式譲渡等は全ての株主に認められていますが(企業法115条1項)、6か月以上継続して1%以上の株式を保有する株主には、企業法166条1項により、取締役又は社長等に対する責任追及が、普通株式の総数の 5% 以上を保有する株主は、次の権利を有します。
取締役会は、広範な株式会社経営に関する事項について決定する権限を有する機関であり(企業法153条1項及び2項)、3人から11人の取締役で構成されます(企業法150条1項)。取締役会は、取締役会の会長、社長の選任や解任権を有しており、取締役会の会長は、主に取締役会の議事進行に関する権利義務を有します(企業法156条)。
ディレクターまたはゼネラルディレクターは、会社の通常業務を管理する方です。 取締役会の監督を受ける。 割り当てられた権利義務の履行について、取締役会および法律に対して責任を負います(会社法第162条第2項第2項)。
企業管理委員会は検査・監督の機能を有し、3~5人の委員で構成される(企業法第168条第1項)。 企業管理委員会の責任者は過半数の原則に従って選出されます(第 163 条第 2 項)。 監査役会のメンバーの大多数はベトナム居住者でなければならず、監査役会の責任者は、経済学、財務、会計、監査、法律、または経営学のいずれかの専攻で大学卒業以上の学位を取得している必要があります。会社の定款で他のより高い基準が規定されていない限り、企業の事業活動に関連する専攻。 (2020 年企業法第 168 条第 2 項)。
以上の他に、法定代表者(企業法12条1項)が必要ですが、定款において別段の定めがない限り、取締役会の長が法定代表者となります。法定代表者はベトナムにおける常駐が必要であり、ベトナム国内を一時的に離れる場合には、その権限を書面にて授権しなければなりません(12条3項)。
Q22.
企業の法定代表者については、企業法(59/2020/QH14)12条がこれを定めています。企業は、少なくとも1名のベトナムに居住する法定代表者を常時確保しなければなりません(同3条12項)。また、多くの場合企業法定代表者は1名ですが、この代表者がベトナムを出国する場合、法定代表者の権利義務の履行について書面により他者に委任を行う必要があります(13条3項)。なお、このような委任が行われても、法定代表者は引き続き委任事項について責任を負います。
これに対して、株式会社の株主や有限責任会社の出資者に対する国籍要件はありません。株式会社においては、株主総会の開催地がベトナム国内であることが法定されている(140条1項)関係で、ベトナムに居住していることが事実上必要となる場合があります。もっとも、株主総会への参加はオンラインによる方法も認められているため(144条3項c))、ベトナムに居住していなければ株主としての権利を行使できないわけではありません。
Q23.
一般的にはベトナムでの契約には民法及び商法が適用されます。その他、契約類型や業種によって各特別法の適用があります。
日本国内と同様にベトナムにおいても契約一般にはベトナム民法(91/2015/QH13)やベトナム商法(36/2005/QH11)が適用されます。日本とベトナム間の取引のような国際取引においては、両者の契約によって準拠法を定めることができますが(民法683条1項)、契約において準拠法を定めなかった場合、民法683条2項により適用される国の法令が定まります。例えば、物品の売買契約の場合は、売主の常居国や設立国の法令が適用され、役務提供契約の場合は、役務供給者の常居国や設立国の法令が適用されます。
ベトナムでの契約において特に注意したい点は、契約の要式性や、契約内容に特定の事項を盛り込むことが義務付けられているか否かです。契約の要式性については、商法で定める契約類型に該当する契約を締結する場合は、書面により締結する必要があります。例えば、販売促進サービス契約、商業広告サービス契約、物品及びサービスの展示紹介サービスのための契約、商品見本市又は展示会の開催、参加サービスのための契約などが挙げられます。契約内容への特定事項の記載については、労働契約における契約期間や昇給制度などの記載が義務付けられています(2019 年労働法第 21 条)。
最後に、民法や商法の規定に加え、特有の事項について、不動産事業法や住宅法、知的財産法などにおいて、別の定めが置かれています。また、国際取引の場合、国際条約や協定なども適用されます。物品売買では、CISGの適用があるかどうかなどに目を配る必要があります。
Q24.
個人の場合は本人の署名、法人の場合は法定代表者の署名が必要です。その他、代理人による場合もあります。
個人の場合は言うまでもなく、本人が署名をする必要があります。本人の署名以外では代理による署名があり、民法(91/2015/QH13)134条以下にその定めが置かれています。 ベトナムでは、代理とは、個人または法人(以下、代表者)が他の個人または法人(以下、代表者)を代表し、その利益のために行う行為を指します。 ただし、他の法令により代理行為が禁じられている場合もあるため注意が必要です(同条2項)。一般的には、代理権の付与について本人から委任状が発行されているため、代理人と代理行為により契約を締結する場合には、当該委任状の有効期間などの有効性と、委任事項及び締結しようとしている契約内容との整合性を確認する必要があります。
次に、総会社との契約締結に際し、2020年企業法第12条第1項によれば、企業の法定代理人は、企業の取引から生じる権利および義務を履行するために企業を代表し、また、民事事件の解決を求める者として、原告、被告、関係者として仲裁機関、裁判所において企業を代表し、その他法定の権利および義務を履行する個人であると規定されています。したがって、会社との契約においては、会社の法定代理人の署名が必要となります。
Q25.
ベトナムでは、原則として署名権限がない者が署名した契約書は無効となります。ただし、署名権限のない者が署名した契約書であっても、法律の規定に基づき、無権代理又は越権代理が成立し、例外的に有効と扱われる場合もあります。
ベトナム法において、署名権限がない者がした契約書に関する事項は民法(91/2015/QH13)が定めており、本人以外の者が本人に代わって署名を行う場合、すなわち代理人としての代理行為は同法134条、141条1項により、本人からの授権の他、一定の事項に該当しなければ有効に成立しないのですが、この点は日本国内法と差はありません。そのため、次に説明する無権代理規定や越権代理規定の適用がなければ、署名権限がない者が署名した契約書は無効として扱われます。
ベトナム民法における無権代理及び越権代理に関しては142条及び143条に定めがあり、前者は基本となる代理権が存在せず全くの無権限の状態であり、後者は基本となる代理権はあるものの代理権が与えられていない事項について代理を行ったという違いがあります。しかし、条文構成上は大きな差は認められません。いずれの場合も、無権代理/越権代理が行われた際に、本人が承認/同意し、知りながら合理的期間内に反対しない、代理行為が無権代理/越権代理であることを相手方が知らず又は知ることができなかったことについて本人に過失があるときに例外を認めています。例えば、自社従業員が無断で会社名義の契約書に署名を行った場合おいて、これを認識しつつも対応を漫然と怠ってしまった場合などは、会社に対して契約書の効果が帰属することとなります。逆に契約相手方の署名が事後的に署名権者でないことに気づいた場合は、これらの規定を意識しながら対応することとなります。
また、結果が本人に起因していない場合には、代理人が不法代理及び損害代理の責任を負います(平成27年民法第142条第2項、第143条第2項)。代理人と取引をした相手方は、無権/越権代理人が無権限/越権であることを知り又は知るべきであったのになお取引をした場合、または本人による承認/同意がない限り、当該無権限/越権部分について、解除権や損害賠償請求権を取得します。また、無権/越権代理人が相手方と故意に当該代理行為に及んだ結果、本人に損害が生じた場合は、代理人と相手方は連帯して、本人に対し責任を負います(同法142条4項及び143条4項)。
署名権限がない人が署名した契約書等の有効性について、以前より裁判でも争われており、立法上も2015年の民法改正の際、日本民法の表見代理に相当する制度を導入すべきではないかという様々な議論がありました。そのため、2015年の民法第1法案及び第2法案には、明確に表見代理制度が盛り込まれていましたが、残念ながら国会での可決には至りませんでした。 このような中、公開されている裁判例では、民法142条及び143条を適用し、無権/越権代理行為を行った銀行員や会社の役員等が締結する契約の有効性を肯定する判断も出ていますが、無権/越権代理に関する立証責任の負担を考えると、企業間取引においては、特に次のような場面で注意を払う必要があります。
署名者が会社の法定代表者でないものの、副社長、支店長、部長などの役職に就いている場合、役職から安易に代表権限があるものとして契約を締結しがちですが、海外取引においては、相手方や契約の重要度に応じて委任状の有無を確認すべき場面も生じます。委任状の確認を行う場合は、当該契約行為が委任状における委任事項の範囲内であるかの確認と、委任状の有効期間が切れていないか等の委任契約の有効性の確認が重要になります。
Q26.
ベトナム法においては、特別法の規定によりベトナム語での作成が義務付けられている場合を除き、契約当事者が契約時の言語を自由に選択することができます。
ベトナム法に基づき契約を締結する場合の言語に関する留意点は、次の2点が挙げられます。
【契約当事者間の関係性】
ベトナムの法律によれば、原則として、契約書で使用される言語の選択は契約当事者の決定となります。 2015 年の民法と 2005 年の商法には契約文言に関する規定がありません。 専門法に契約文言に関する特別な規定がない限り、契約当事者が自ら契約文言を選択できると理解できます。
例えば、ベトナム法令において、契約書の使用言語をベトナム語と指定している契約類型には、次のものが挙げられます。
消費者との契約 (2023 年消費者権利保護法第 23 条第 2 項)
原則としてベトナム語が選択され、これを変更するためには当事者間の合意か別途法令の定めが必要となります。
郵便サービスの提供および利用に関する契約(2010年郵便法第9条第2項)
契約書自体はベトナム語で作成されなければなりません。ただし、外国語を用いることについて当事者の同意がある場合は、当該外国語で作成された契約書が効力を持つことになります。建設コンサルタント契約(通達 08/2016/TT-BXD 第 4 条)および建設契約で使用される文言(2016 年 03 月 10 日付通達 09/2016/TT-BXD 第 3 条第 3.2 項) (03/2016建設指導工事契約)、上記政令 37/2015/ND-CP の適用範囲と同様の適用対象、2 種類の契約 これはベトナムの法制度に準拠。
ベトナム語による契約書作成が求められています。契約に外国の要素が含まれている場合、使用言語はベトナム語および両当事者が合意した外国語となります。 合意に達しない場合には、英語が使用されます(当事者は、契約取引中に使用される言語、および契約上の紛争があれば解決するための言語使用の優先順位について合意します)。
【国家及び契約における各当事者の関係】
作成文書を監督官庁に提出等する場合、ベトナム語で作成された書面の提出等を求められるか、外国語作成の場合はその翻訳文を求められることが多く、文書作成時の言語選択には、使用方法も含めた検討が必要になります。
また、契約書作成の究極的な目的は、契約書において定めた権利義務を最終的には司法(裁判手続)によって実現する点にありますが、ベトナム民事訴訟法(第92/2015/QH13号)第96条3項では、裁判で用いる証拠資料についてベトナム語の翻訳文添付を求められています。
その他、ベトナム語の資料提供が求められる典型例としては、税法、会計法又は公証法に関係する文書作成時が考えられます。外国語で書かれた書類はベトナム語に翻訳する必要があります。納税者は翻訳に署名および押印し、翻訳の内容について法律に対して責任を負います。外国語の文書がA4で20ページを超える場合、納税者は書面による説明を行い、納税義務の決定に関連する内容および用語のみの翻訳を依頼する必要があります。(2013 年 11 月 6 日付財務省通達 No. 156/2013/TT-BTC の第 5 条第 4 項では、税務記録に使用される言語はベトナム語であると規定されています)。
以上のような留意点があることを踏まえると、必要に応じて、日本語や英語による契約書作成だけでなく、ベトナム語での作成の必要性を検討するべきといえます。
Q27.
消費者を保護することを目的として、消費者権利保護法に基づき、さまざまな消費者保護規定が設けられています。
【消費者契約概要】
消費者契約は、2023 年消費者権利保護法で規制されています。この法令は、主にベトナム領土内における法人や継続的に商業活動を行う個人(以下、これらを総称して「事業者」といいます。)から、消費者が、消費、生活目的で商品やサービスを購入、利用する場合に適用されます。事業者と消費者間の契約は原則的には一般民事法令の規定に従って規律されるものですが(2015 年民法第 14 条第 1 項)、消費者権利保護法は、消費者を保護する特別な規定を置くことで、消費者の権利を保護しています。
【特定の取引における加重要件】
首相が公布した主要商品・サービスリストに掲載されている商品・サービスを販売・提供する企業は、保険を管轄する国家管理機関に契約文書または一般取引条件に従って契約を登録しなければなりません。消費者との関係に影響を及ぼす可能性があるため、利用する前に消費者の権利を保護しなければなりません。
(2023 年消費者権利保護法第 28 条第 1 項)。
このような手続が別途必要となる商品・サービスリストは下図のとおりです。なお、この商品・サービスリストは政府首相による決定(02/2012/QD-TTg)がベースでしたが、現在では、政府首相による決定(38/2018/QĐ-TTg及び25/2019/QĐ-TTg)により修正が加えられています。リストに該当する場合、受理機関は、申請から20営業日内に、形式面を含め契約書の内容及び条件等を審査し、法令適合性に基づき許認可を行います。
【消費者との契約方式に関する修正】
契約方式について消費者権利保護法は、消費者契約を書面で締結しなければならないという修正と、契約書に用いる言語はベトナム語でなければならないという2つの点を修正しています。書面で締結した場合、契約の言語は明確かつ分かりやすく表示される必要があります (2023 年消費者権利保護法第 23 条第 2 項)。もっとも、書面については、一部電子手段により契約を締結することができ、また、ベトナム語についても、当事者が合意した場合や法令が規定した場合には、他の言語によることができます(法14条2項)。
標準様式契約を締結する前段階では、事業者は、消費者が契約書を理解する適切な環境を設けなければならず、例えば契約前に熟慮期間を設ける方法などが考えられます(消費者の権利保護に関する法律第 26 条第 1 項)。また、事業者が消費者との契約で取引一般条件として適用される規則等がある場合は、消費者が契約関係に入る前にこれを公開する必要があります(2023 年消費者の権利保護に関する法律第 27 条第 1 項)。 また、これらの取引約款は、一般的な取引条件の内容を消費者に知らせるために申請時期を明示し、事業者団体や個人が本社や事業所の見やすい位置に掲示するほか、ウェブサイトやアプリケーションソフトに掲載するなどの形で公表しなければなりません。 (該当する場合) (2023 年消費者権利保護法第 27 条第 2 項)。
また、標準契約書締結後、消費者が保管する契約書が紛失または破損した場合には、消費者、団体または個人からの請求を受領した日から7営業日以内に、事業者は契約書のコピーを提供する義務があります。(2023年消費者権利保護法第26条第2項)
【消費者と締結した契約書の条項、取引一般条件の無効】
消費者権利保護法は契約条項の内容についても定めを置いており、法25条により、次のような場合には、消費者と締結した契約書の条項、取引一般条件が無効となります。いずれも消費者にとって不利な条項を含む場合であり、これら項目に関連する条項を契約書中に設けようとする場合には、細心の注意が必要となります。なお条項の解釈において当事者間で異なる解釈が成り立つ場合、消費者の解釈が優先されるため(法24条)、契約条項のドラフティングにおいては、現地語において一義的に明確な表現を心掛ける必要があります。
【標準様式契約が必要となる物品及びサービス分野】
No. | 物品及びサービス |
---|---|
1 | 住居用電力供給 |
2 | 住居用水道供給 |
3 | テレビ視聴 |
4 | 固定電話サービス |
5 | 携帯電話サービス(電話料後払い)携帯電話サービス(プリペイド方式) |
6 | インターネットサービス |
7 | 航空旅客 |
8 | 鉄道旅客 |
9 | アパート売買、アパート管理者による日常生活サービス |
Q28.
ベトナムにおける契約違反への対応は、主にベトナム民法(91/2015/QH13)及び商法(36/2005/QH11)に一般規定として置かれています。
契約違反が生じた場合、民法上、違反の程度に応じて契約条項の修正、契約の解除、契約の一方的終了などがあります。契約の一方的終了は日本民法にない制度であり、解除との違いを知っておく必要があります。また、併せて損害賠償の請求も検討の対象となります。
まず、契約の違反が軽微である場合や、相手方との取引関係・信頼関係などから形式的には契約内容に違反しているものの、取引関係自体は維持したい場合、新たに契約を締結するのではなく、既存の契約の修正という形で契約違反に対応することが考えられます。契約の修正については421条に定めがあり、特段契約の修正に対して要件などが定められているものではありません。契約の修正に類似するものとして、事情変更時の契約修正権があります(民420条)。420条は、契約締結後の契約履行について、事情変更により修正が生じた場合の条文であり、損害等軽減措置を講じることができず、契約の履行が重大な損害をもたらすなどの諸要件を満たす場合には契約内容の再交渉が認められています。
次に契約解除については、民法423条は、契約の解除権を発生させる契約違反が生じた場合、重大な契約違反が生じた場合、その他法令等の規定する場合を一般的な解除原因としており、ここでいう重大な違反とは、日本と同様、契約目的を達することができなくなる程度の違反とされています(第423条第2項)。なお、解除権を行使した場合、解除権者が損害賠償義務を負うことは原則としてありませんが(同条1項)、契約解除前に通知を行わなければ、解除により相手方に生じた損害を賠償する旨法定されている点に注意が必要です(第423条第3項)
また、民法上は履行遅滞解除(法424条)、履行不能解除(法425条)については日本とほぼ同様と思われます。なお、履行遅滞解除には、その時期に履行されなければ契約目的を達せられない場合のような日本でいう定期行為に対する遅滞解除も含まれています。その他、日本にない契約解除類型ですが、代替性のない契約目的物が滅失又は損傷した場合の解除権も認められています(法426条)。このようにして発生する解除権の行使ですが、解除効は日本における解除の遡及効と基本的に異なりませんし、解除権の行使により損害賠償請求が妨げられることもありません(法427条)
契約の一方的終了は428条に定めが置かれ、契約上の義務に対する重大な違反が生じた場合に、自身の契約上の義務の履行を終了させる制度として規定されています(同条1項)。同条2項で終了についての通知を出さなければ損害賠償義務が生じ、3項により履行済みの義務部分については清算を請求できるなど、上記解除と類似した制度ですが、法的には契約が遡及的に消滅するのではなく、終了させた時点から将来的に消滅する点に差があると言えます。
契約違反に対する金銭賠償については、違約罰の定めが契約において定められている場合は違約金を請求でき、契約義務に違反したことで損害が生じている場合はその賠償を求めることもできます(法360条)。なお、債務不履行を理由とする損害賠償請求については、少なくとも過失が必要であり、日本と同様に過失責任主義が採用されています(法364条)。損害賠償の対象は物質的損害と精神的損害に区分されており(法361条2項及び3項)、それぞれの損害項目について請求が可能です。 ただし、損害賠償請求時に、損害軽減義務が明文にて賠償請求者に課せられている点に注意が必要です(法362条)。
上記の民法上の定めに対して、商法上の契約関係においては、違約罰及び損害賠償範囲について修正が行われています。 商法301条では、違約罰の上限が不履行債務の対価の8%が限度とされており、これを超える金額を違約罰として設けることができません。他方、損害賠償範囲ついては302条にて、消極損害に限られず、逸失利益も請求できるとされています。民法上の損害賠償においては、日本と異なり契約の履行があれば得られたであろう逸失利益については物質的損害の範囲に含まれないと解されていますが、商法においては損害賠償の範囲が拡大された結果、逸失利益についても損害賠償を請求できるとされています。
法的主張をまとめた上で、当該請求を行うために、①当事者間の交渉、②第三者(弁護士)による交渉立ち合い、③和解人による調停立ち合い、④仲裁裁判、⑤訴訟のうちいずれかの方法を選択する必要があります。①から④まで若しくは①から⑤までの選択を段階的に行うことも可能です。また、仲裁を利用する場合は、必ず当事者の合意(契約に既に定めがあるか、または紛争発生後の合意)が必要とされている点にご留意ください。
Q29.
ベトナムにおける民事裁判手続については民事訴訟法(92/2015/QH13)に定めがあり、裁判制度としては二審制が採用されています(法17条1項)。ただし、法的効力が発生し、法律違反または新たな詳細が判明した裁判所の判決および決定は、破棄または再審の手続きに従って再検討されます(第 17 条第 2 項)。
民事訴訟手続きは、訴状の提出から始まり、裁判所が訴状を受け取った時点で始まります。訴状を受け取ってから3営業日以内に、裁判所長は裁判官を指名して訴状を審査させます(第191条第2項)。裁判官は指名されてから5営業日以内に、訴状を審査しなければなりません(第191条第3項)。訴状の審査後、修正や補足を要求し、通常の訴訟手続きに従って事件を受理し、裁判権を移管し、裁判権を持たないために訴状を返還することが可能です(第191条第3項のa、b、c、d)。
事件受理となった場合は、裁判官は、事件受理日から3営業日内に事件受理の通知を原告提出の訴状や証拠と併せて被告へ発することとなります(196条1項及び3項)。事件受理通知を受領した被告は、通知受領日から15日間に答弁書を裁判所に提出しなければなりません(199条)。ベトナムの民事裁判においては、日本の民事訴訟手続と異なり、原則として裁判所による和解勧試が必要的なものとして定められています(205条)。ただし、和解はあくまで当事者による合意を基にするため、例えば当事者の一方が和解の意思がないとして和解を拒む場合、裁判所は和解ができない事件として民事訴訟手続を進めることとなります(法207条)。
訴訟審理を経た後、判決が下されますが、控訴期限は判決言渡日から15日間とされています(法273条1項)。
Q30.
土地及び建物の所有については、民法(91/2015/QH13)197条に定めがあり、土地は全人民の所有に属する公共財であり、国が所有者を代表し、統一的に管理を行うとされています。なお、同趣旨の規定がベトナム憲法53条にも置かれています。これに対して、建物はこの公共財に含まれていません。このため、土地については国家が所有権者であり、個人又は法人がベトナムの土地の所有権を取得することができないとされています。他方で、建物は公共財でないため、民法221条1項又は4項などで定められている所有権発生を満たす限りにおいて、個人又は法人がこれを取得することができます。特に建物の所有権の発生について問題になることはないかと思われますが、通常建築行為などが所有権発生要件を満たすと考えられます。
ベトナムにおいては、このように土地は国が所有し、建物は個人又は法人が所有するため、理論上建物を所有する者は土地を不法占有している状態となります。そのため、土地については土地使用権限を取得する必要があり、この使用権限に関する法令として土地法(45号/2013/QH13)があります。一般的に、土地使用権限を取得するには、国から交付の方法により取得する方法と、土地使用権を有する国などから賃貸に基づき取得する方法とがあります(法53条)。
土地法上、土地使用権が外資系企業に認められているのは、当該外資系企業が販売し、又は販売/賃貸用住宅の建設投資案件を実施する場合のみとされています(法55条3項)。なお、外資系企業が賃貸を行いたい土地の所在地が、工業団地、工業区、加工輸出区に属している場合は、これらの地区におけるディベロッパーからサブリース(転貸借)の形式により土地使用権を取得することができます(法149条3項)。
このように、ベトナムでは制度上土地の所有権は取得できず、使用権を取得できるにとどまります。これに対して、建物については所有権を取得することが可能です。また、所有権と使用権の差異については、所有権は、占有、使用収益及び処分などの面において法令の定めを除き自由に権利者が行使することができますが、使用権の場合、その使用に対価が生じたり、賃貸契約により使用目的が設定されるなどある程度の制限を受けつつ使用収益が可能という点にあります。
Q31.
ベトナムでは、2013年憲法第53条に基づき、土地は全人民の公有財産であり、国家が所有権を代表し、一元的に管理しています。したがって、ベトナムには土地所有権が存在せず、土地使用権のみが存在します。外国資本の企業が土地使用権を持っている場合、その企業は次の権利を与えられます。
これらの規定に基づいて、外国資本企業はベトナムで土地利用権を行使することができます。
Q32.
ベトナムにおける建物については、土地と異なり、国の所有とされておらず、個人や法人が自由にその所有権を取得することができます。建物の所有権については民法上の定めにより、占有権限や使用権限、処分権限が認められています(民法(91/2015/QH13)第1節)。ただし、住宅法(27/2023/QH15)により、建物を所有する外国人(個人)が第三者に賃貸を行う場合は、建物所在の県級住宅管理機関に対して、住宅の賃貸について文書により通知しなければなりませんが、外資系企業の場合は、自社の従業員の社宅としての使用のみが認められ、第三者への賃貸等は認められていません(法162条2項)。これは外資規制との関係によるものと思われます。
また、これらの者には外資系企業や外国人(個人)においては、ベトナムの建物の所有権取得について総量規制が置かれている点に注意が必要です。主に住宅法第9章にその定めが置かれています。当該規制の中で特に注意を払うべき点は、これらの者は、1つの共同住宅建物内の戸数の30%を超えない限度でのみ、購入、賃借、受贈、相続及び所有等ができる旨の制限のほか、別荘及び連結住宅を含む個別住宅については、坊級行政単位と同等の人口の区域内では、1区域内あたり250件を超えない限度でのみこれらを所有することができるという、所有割合及び所有件数に関する制限についてです(同法19条))。また住宅法20条2項c)では、外国人(個人)が住宅を取得した場合、更新は認められるものの、その期間は50年とされています。外資系企業の場合は、IRC(投資登録証明書)記載の期間が、対象となる住宅の保有期間となります(同条20同2項d))。
Q33.
外国人や外資系企業であるかどうかを問わず、ベトナムでは憲法や民法の規定から土地の所有権を取得することはできず、土地については使用権を取得し土地使用を行うことになります。土地の使用には国から割当土地使用権を取得する方法と、国や第三者と賃貸借契約を締結することで土地を使用する方法がありますが(第126条第3項)、割当土地使用権が土地法上(第167条第1項)、外資系企業に認められているのは、当該外資系企業が販売し、又は販売・賃貸用住宅の建設投資案件を実施する場合のみとされています(土地法(45号/2013/QH13)55条3項)。そのため、ほとんどの場合、国からの賃貸借契約により土地使用権を取得するか、又は外資系企業が賃貸を行いたい土地の所在地が工業団地、工業区、加工輸出区に属している場合は、これらの地区におけるディベロッパーからサブリース(転貸借)の形式により土地使用権を取得することができます(法149条3項)。
建物については所有権を取得することができるほか、一般の企業や個人から賃貸借の方式により使用権を取得することもできます。この場合、民法(91/2015/QH13)の定めによることとなります。ただし、外資系企業等に対する規制として、所有期間や所有権の個数、使用方法にそれぞれ制限が置かれている点に注意が必要です。外国人(個人)が建物を所有する場合において第三者に賃貸する場合は、住宅法により、建物所在の県級住宅管理機関に対して文書により通知しなければならず、外資系企業の場合は自社の従業員の社宅としての使用のみが認められ、第三者への賃貸等は認められていません(法162条2項)。また、外資企業等は1つの共同住宅建物内の戸数の30%を超えない限度でのみ、購入、賃借、受贈、相続及び所有等ができる旨の制限や、別荘及び連結住宅を含む個別住宅について、坊級行政単位と同等の人口の区域内では、1区域内あたり250件を超えない限度でのみこれらを所有することができるという制限もあります(法161条2項a))。最後に、住宅法161条2項c)では、外国人(個人)が住宅を取得した場合、更新は認められるものの、その期間は50年とされています。
Q34.
ベトナムでは土地の所有権が国に帰属していますが、不動産登記制度はあり、民法、土地法、住宅法など各種法令の中で登記の利用が予定されています。
土地については、所有権ではなく、国から割り当てられた割当土地使用権や、国との賃貸借契約に基づく使用権を登記することとなります。例えば土地法(45/2013/QH13)3条項では、土地に対する使用権や土地に定着する住宅その他財産の法的状態を土地管理台帳に申告又は記録することを土地等の登記と定義しており、法22条では土地の登記や土地管理台帳の作成及び管理等が土地に対する国の管理内容として定められています。なお、資源環境省が、土地の国家管理機関とされています(法24条2項)。
ベトナムにおいては、土地使用権者及び管理のために土地を割り当てられている者においては義務的に登記を行わなければなりませんが、土地に付着する住宅その他財産に関する所有権登記については所有権者の要求に基づき登記されるものとされています(法95条1項)。なお、具体的な登記手続は政令に定められています(148/2020/NĐ-CP)。建物については住宅法(65/2014/QH13)9条により、適法に住宅を所有している場合における、土地使用権、当該住宅及び土地に定着する財産所有権証明書の発給を受けることができるとされています。
土地使用権及び土地に定着する住宅その他財産の所有権に関する登記制度はありますが、公開されていません。従って、土地使用権等の所有権の使用者・所有者を確認する方法として、日本のように登録されている登記を参照する手法が採れません。しかしながら、土地使用権等の所有権を取得する際、相手からレッドブック(土地使用権証明書)やピンクブック(建物所有権証明書)を提供される場合、当該レッドブックに記載する情報が正確であるかどうか、個別に資源環境省へ確認する方法で、権利関係を確認する方法もあります。
Q35.
ベトナムの不動産分野において、レッドブックとはピンクブックより前に発行された土地使用権の証明書を指します。
ピンクブックとは、資源環境省が発行する宅地使用権、住宅使用権、土地に付随するその他の資産の証明書を指します。現在では、土地法(45/2013/QH13)3条16項により、土地使用権及び土地に定着する住宅その他財産の所有権証明書として一括して定義されており、法97条1項により、当該証明書は全国統一の様式にて土地使用権者、住宅所有権者、土地に付着する財産の所有権者に交付されます。法改正により一括管理されることとなった結果、現在ではレッドブックのみが利用されています。
分譲マンションの所有権証明書の様式も土地使用権及び土地上財産所有権の証明書(レッドブック)に統一されていますが、土地使用権及び土地に付着する財産の所有権の証明書と区別するために、実務上ピンクブックと呼ばれています。
Q36.
ベトナムでは、民法(91/2015/QH13)により 09 の安全対策が規定されています(2015 年民法第 292 条)。例外として、法令に基づく登記が必要な担保権の種類があり、ベトナムでは土地や建物に対する担保権の設定が認められていますが、その効力発生には登記が必須の要件となります(点a、b)
政令 102/2017/ND-CP、第 4 条第 1 項)。例外として、法令に基づく登記が必要な担保権があり、ベトナムでは土地や建物に対する担保権の設定が認められていますが、その効力発生には登記が必須の要件となります(点a、b) 、政令 102/2017/ND-CP、第 4 条第 1 項)
ベトナムの土地法(45/2013/QH13)に基づき、土地や家屋など不動産と呼ばれるものに関して、土地使用権や土地に付随する建物などの個別財産を担保とすることが認められています。
土地や家屋などのいわゆる不動産については、ベトナム土地法 (45/2013/QH13) により、ベトナムでの運営が許可されている土地使用権および組織の土地に付随する住宅などの個人資産に対する抵当権の設定が認められています。
Q37.
ベトナムでは、不動産関連の区分において、憲法等から土地の所有権は国に帰属し、建物の所有については各法人や個人が取得できる制度となっています。そのため、いわゆる抵当権設定の方法による不動産担保について、日本法と大きく異なる注意点があります。
不動産のうち、土地に関する抵当においては、土地所有権ではなく国から割当又は賃貸等をされ、取得した土地使用権が抵当権の対象となりますが、抵当権を設定することのできるものは土地法(45/2013/QH13)168条1項により土地使用権証書を有する場合に抵当権の設定が可能となります。また、抵当権は契約によって設定する約定担保ですが、当該契約は公証等が必要とされている上(法167条3項a))。そして、最も注意すべき点は、土地使用権に抵当権を設定する場合、抵当権者は原則として金融機関とする点で、抵当権者につき制限のない日本法と大きく異なっています(法174条2項、175条1項)。例外として、個人や家族世帯が土地使用権者である場合には金融機関以外の経済組織に抵当権を設定することができますが、この場合も外国人や外資系企業がこれに該当することはほとんどないと思われます(法179条1項)。
また、建物に対する抵当権については住宅法(65/2014/QH13)に定めが置かれており、例えば、住宅の所有者が法人の場合は、ベトナムで活動する与信組織のために抵当権を設定することができ、個人が所有者である場合は、与信組織に加え、経済組織又は個人のために抵当権を設定することができるとされています。
Q38.
ベトナム企業との契約において注意すべき最初の点は、契約締結権限の確認です。契約締結権限者に問題がなければ、次いで準拠法に注意を払う必要があり、ベトナム法が適用される場合には、各種法令の内容に注意を払わなければなりません。
ベトナム企業と契約する場合、ほとんどの場合当該企業は有限責任会社もしくは株式会社になりますが、ベトナム企業法(59/2020/QH14)12条により、これら企業は法定代表者を定款上定めることが求められています(2項)。企業の法定代表者は企業取引上の権利義務を行使する者であり、法定代表者が当該企業の契約締結権者となります。
次に注意すべき点は、契約における準拠法の設定です。準拠法が日本法とされている場合は、国内取引とさほど異ならず対応することが可能です。ただし、裁判管轄も日本としている場合は、強制執行時の実効性には留意する必要があります。なお、ベトナムはニューヨーク条約に加入しているため、仲裁判断であればベトナム国内でも執行できます。また、準拠法を定めなかった場合については、、ベトナム民法(91/2015/QH13)683条に定められており、1項では一般原則として最密接関連地法が準拠法とされ、2項では個別の契約ごとの準拠法が定められています。売買の場合は売主の常居所地(法人の場合は設立地)法が準拠法となり、役務提供契約の場合は役務供給者の常居所地(法人の場合は設立地)法、使用権移転契約・知的財産権譲渡契約については権利受領者の常居所地(法人の場合は設立地)法、労働契約については労働者が常時労務の提供を行う国の法令、消費者契約については消費者の常居地法とされています(同条2項)。
最後に、ベトナム法が適用される場合は、代表的なものとして、商行為としての販売代理店契約などのサービス提供関連の契約においては多くの場合書面での契約締結が必要であり、また、知的財産権関連であれば、契約書の作成、内容の法定事項、契約の登録などが必要となります。
Q39.
ベトナムの担保制度につき、民法(91/2015/QH13)で定める担保は9種類あり(292条、下図)、法定担保は、物的担保である留置権のみとなります。その他の担保は全て約定担保であり、契約により設定できます。所有権留保の方法による担保は、2015年の改正により追加された制度となります。
約定担保の被担保債権の範囲は契約によって定められますが、契約書にこれを定めなかった場合において、法令に定めがあるときは法令に従い、法令の定めがないときは利息の支払債務、違約金支払債務、損害賠償債務なども被担保債権の範囲に含まれます(293条1項)。また、将来債務であっても被担保債権の範囲に含めることができます(同条2項)。もっとも、将来債務を被担保範囲に含める場合は、その範囲や被担保債務の履行期限について具体的な合意が必要とされています(294条)。被担保債務の数について、被担保債務は担保財産の価値を超えない限り複数設定することもできます(296条)。この場合、担保権設定者は、後順位担保権者に対して、先順位の者がいることを通知する義務を負います(296条2項)。担保権設定においては、契約書の他、担保権設定登記も法令上規定されていますが(法298条1項)、登記自体は担保の有効性に影響を与えません(法令の定めがある場合を除く)。ただし、登記の時点から第三者対抗要件としての効力が生じるため(同条2項)、担保権設定契約後は速やかに登記を行うことが望ましいでしょう。担保権設定後の登記方法や必要書類については政令(102/2017/ND-CP)に定めがあります。
担保権の実行については、その実行方法に合意できない場合は、競売手続きが行われることになります(第298条第2項)。 また、債権者が担保を受け取る際、担保の価額が担保要件を超える場合には、債権者は差額を精算しなければなりません(2015年民法第305条第3項)。
Q40.
ベトナム民事裁判手続は、民事訴訟法(92/2015/QH13)に定めがあり、強制執行制度は民事判決執行法 (統合文書 09/VBHN-VPQH 民事裁判執行法)。
ベトナムの民事裁判手続きは民事訴訟法(92/2015/QH13)で規定されており、裁判制度は第一審および控訴審制度に従います(第17条第1項)。ただし、法的効力が発生し、法律違反または新たな詳細が判明した裁判所の判決および決定は、破棄または再審の手続きに従って再検討されます(第 17 条第 2 項)。
ベトナムでの民事裁判の流れ自体は大きく日本と異なるものではなく、訴状の提出に始まり、裁判所は訴状審査がなされた後、被告への通知や答弁書提出を促しながら、第一回期日を設定します。 その後、準備手続が重ねられ、和解ができない場合は判決に至るというものです。日本とは異なるベトナムの特徴は、原則として裁判所による和解勧試が必要なものとして定められている点です(民訴法205条)。また、法令上は各手続において処理日数が規定されていますが、訴訟結審までの期間は長期化しやすく、数年から10年以上必要となる場合もあります。
判決の強制執行制度については、任意執行と強制執行がありますが(民執法9条)
強制執行は、判決決定執行決定受領日から10日以内に任意執行を行わない場合に講ぜられる執行手続となります(VBHN第45条)。差し押さえられた資産および文書が判決債務者の所有権および使用に属すると判断する根拠が得られた日から 10 日以内に、執行者は本法第 4 章に規定されている規定に従って執行措置を適用する決定を下さなければなりません。
Q41.
ベトナムにおける労働契約は、日本の法律と同様に、労働者と雇用主の間で行われる、労働に対する給与、労働条件、両者の権利と義務についての合意を指します。両者が別の名前で合意していても、給与や労働管理、監督を含む雇用に関する内容が明確に記載されている場合、それは労働契約と見なされます。労働者を雇用する前に、雇用主は労働者と労働契約を締結しなければなりません(労働法2019年第13条)
2019 年労働法には 2 種類の契約があります。
無期労働契約とは、双方が契約期間や終了日を定めない契約です(2019年労働法第20条第1項a点)。両当事者が契約発効日から 36ヶ月以内に契約期間および終了日を決定する労働契約(2019 年労働法第 20 条第 1 項 b 項)。
有期労働契約において、労働期間が終了しても従業員が引き続き勤務する場合は、次の通りに取り扱います。
Q42.
試用契約の内容や期間等に定めがありますが、可能です。
ベトナムは試用期間の設定に関する法令として労働法(45/2019/QH14)及び政令(45/2020/NĐ-CP)によって、定められています。
労働法2019年第24条は、雇用主と労働者が労働試用期間の内容を労働契約に記載するか、試用期間契約を締結することによって合意できることを規定しています。ただし、労働契約期間が1か月未満の場合、労働試用期間は適用されません(第24条第3項)。また、試用期間契約を締結する際には、法的な問題が契約書に明記されなければなりません(第24条第2項、第21条第1項)。ただし、労働契約に必要な事項は労働法に基づいて明示されるべきであり、賃金システム、社会保険、健康保険、技能向上などはこれに含まれません(第21条第1項)
もっとも、契約必要事項は、労働契約法による記載すべき項目から、昇給制度や社会保険及び医療保険、職業技能水準の向上といった項目を除いたものになります(21条1項)。なお、試用契約においても、給与について、当然両者で合意することができますが、同種の業務に対する給与の85%が下限とされています(法26条)。
労働法2019年第25条によると、労働試用期間の期間は、労働者と雇用主が合意して、その仕事の性質や複雑さに基づいて定めることができます。また、同じ仕事に対しては一度だけ試用期間を設けることができ、試用期間に関する条件は民法2019年第25条で規定されていることが保証されています。
試用期間中から試用期間満了時までの間に、当該試用期間中の労働者が雇用主側の期待に沿っているものかどうかの判断をする必要があります。労働者の試用期間の労働が満足できるものである場合、雇用主は当該労働者と労働契約を締結しなければなりません(27条1項)。一方、これが達成されない場合には、試用期間契約を解除することができます(第27条第1項)。また、試用期間中は、各当事者は予告なく無償で試用契約または労働契約を解除する権利を有します。(第27条第2項)ので、試用契約中にどのような場合がこれに該当するのか明記しておくことが望ましいでしょう。なお、このような項目は、試用契約の必要的記載事項ではありません。
Q43.
労働法2019年第32条では、時間労働が通常の労働時間よりも短い(1日あたり12時間を超えない)場合、または週または月の労働時間が法律、集団労働契約または労働規則で規定される場合について、短時間労働(パートタイム労働)に関する規定がされています。
このようなパートタイム労働者との労働契約は、当事者間の合意で成立させることができます(32条2項)。
パートタイム労働者であっても、賃金の支払い、各種権利義務、機会均等や差別の取扱いを受けないことや労働安全衛生について、一般の労働者と同様に扱われます(32条)。そのため、パートタイム労働者は、基本的には労働者と同様の地位を有していますが、就労時間において特徴がある勤務形態といえるでしょう。
Q44.
ベトナムにて労働契約書を作成するためには、労働法(45/2019/QH14)、及び関係政令(145/2020/NĐ-CP)を参照する必要があります。
労働法14条は労働契約の形式について、書面により締結し、2部作成することを規定しています。
労働法(2019年第14条第1項)によると、電子データメッセージによって締結される労働契約は、文書による労働契約と同様の法的効力を有します、口頭での契約が認められるのは1か月未満の場合となります。(第14条第2項)
次に労働契約の内容ですが、23条において次の項目を主な内容としなければならないとされています。
この詳細を定めるのは政令145/2020/NĐ-CP。これら政令は、例えば使用者名を記載する場合に参照すべき書類(ERC(企業登録証明書)等)を規定するなど、労働者の氏名記載についてはIDや旅券記載事項を参照すべき旨を定めており、採用手続における本人確認方法の検討などで参照すべきものです。
Q45.
労働規制は、労働法第 45/2019/QH14 の第 118 条および政令 145/2020/ND - CP に規定されています。政令 145/2020/ND-CP の第 69 条第 1 項の規定に従って、雇用主は労働規則を発行する必要があります。
労働規制の主な内容は、2019 年労働法第 118 条第 2 項に規定されており、次のとおりです。
また、法令の詳細について政令 145/2020/NĐ-CP 69条において、記載事項が具体的に定められています。例えば、上記a)勤務時間については、1日又は1週間の通常勤務時間、シフト制においては開始時間及び終了時間、残業、特別な状況下における残業などといった項目が挙げられます。
就業規則の作成について、使用者は、基礎労働組合など労働団体の代表組織の意見を聴取しなければなりません(118条3項)。例えば、基礎労働組合がない場合は直属の上位労働組合の意見を聞く必要があり、想定される意見等があれば、当該意見に応じた内容も就業規則に加える必要があります。
また、就業規則は、労働者に通知され、主要な事項については職場の必要な個所に掲示しなければなりません(119条4項)。就業規則は、省レベルの労働分野に関する国家管理機関に登録する必要があります(119条4項)。
近年では、労働紛争の発生が増加の傾向にある中、企業の就業規則の不整備や不適切な管理などによる企業の労務管理上の重要性が再認識されています。例えば、就業規則が強行法規に反する定めを置いている事例や、不必要に法令を引用し就業規則を作成したために就業規則が冗長になり、重要な規定が労働者にうまく伝わらないことなどが見受けられます。就業規則は未然に労使間の紛争を防止し、円滑な労務運営を行うための規則ですので、労働者にとっても明瞭でわかりやすい就業規則を作成することがポイントになります。
従業員に対する規律処分を行う際、就業規則を適用根拠として扱うよりも、すべての従業員が就業規則に定めるルールを理解し、違反行為が起こらないようにするのが最も重要です。従って、労働法の規定を解釈し、使用者及び労働者間のバランスをはかり、わかりやすく就業規則を作成することがポイントとなります。
Q46.
労働法2019年第118条第4項によると、労働規則の通知は必須であり、義務付けられています。具体的な指導は2020年政府規令145号の第69条第4項に記載されています。
作成された就業規則は、公布日から 10 日以内に、雇用主が登録されている省の人民委員会管轄の専門労働機関に登録しなければなりません(法第 119 条第 2 項)。さまざまな地域に支店、部門、生産および事業所を有する雇用主は、支店、部門、生産および事業所が所在する省の専門労働機関に登録された労働規定を送付する必要があります。(法第 119 条第 4 項)
登録手続申請書類を受理した登録先機関は、就業規則の内容が関係法令等に適合しているか否かの審査を行います。当該機関より就業規則の修正等を求められることがあるため、時間的なロスを限りなく減らすためにも、就業規則の制定の際は関連法令や当該機関が発行しているガイドラインなども参考にすべきでしょう。
労働規定の登録申請を受領した日から 7 営業日以内に、労働規定の内容に法律に反する条項が含まれている場合、省人民委員会管轄の専門労働機関は雇用主に通知し、修正、補足、修正するよう指導しなければならない。就業規則は、就業規則申請書が受理され、この受理通知が発行された日から 15 日後に発効します。(労働法第121条第1項)。
Q47.
【労働時間の取扱いについて】
労働時間の定めは労働法(45/2019/QH14)105条から108条までに規定されています。通常勤務時間については、1日当たり8時間、1週当たり48時間が上限とされており(105条1項)、ここからベトナムでは週6日勤務が一般的と言われています。もっとも、政府としては週40時間勤務を奨励している関係から(同条2項)、中長期的には日本と同様週5日の勤務形態が一般化していくと思われます。実際、法律は雇用主が日または週ごとに労働時間を決定する権利を有するが、従業員に通知する必要があると規定しています。 週単位の労働の場合、労働時間は 1 日あたり 10 時間を超えてはならず、週あたり 48 時間を超えてはなりません(2019 年労働法第 105 条第 2 項)。また、夜間勤務の場合は、午後10時から翌日の午前6時までを労働時間として計算します。
2019 年労働法第 107 条第 2 項は、従業員の時間外労働時間に関する詳細な規制を規定しています。 雇用主は従業員を残業させることができますが、次の要件を完全に満たす必要があります。
労働法2019年の第108条に基づき、労働者は、法律の規定に基づいて、国防任務や安全保障のための命令を実行し、人命や財産を保護するための業務、災害、火災、危険な伝染病および災害の影響を防止または軽減するための作業を行う場合には、追加の労働を拒否することはできません。ただし、労働者の生命や健康に危険が及ぶ可能性がある場合は、労働安全衛生法の規定に従う。
【祝日の取扱いについて】
2019 年労働法第 112 条は、従業員の休日と年末年始に関する詳細な規定を定めています。祝日は元旦(1日)、旧正月(5日)、戦勝記念日4月30日(1日)、国際労働者の日5月1日(1日)、建国記念日2月9日(うち1日休みを含む2日)祝日の前後)、フン・キングの命日は暦の3月10日(1日)です。さらに、ベトナムで働く外国人労働者には、伝統的なテトのために追加の 1 日の休暇と、自国の建国記念日に 1 日の休暇を得る権利もあります。(第112条第2項)。
Q48.
ベトナムでは労働法(45/2019/QH14)98条において、労働者が時間外労働を行う場合の割増率が規定されています。割増率は、次のとおりです。
また、深夜労働として22時から翌6時までの労働が定義され(法106条)、深夜労働については20%の割増が定められています(法98条3項)。
第99条第1項によれば、雇用者の過失により労働者が退職する場合、労働者は全額の給与を受け取る権利があります。しかし、第99条第2項では、労働者が自己の過失により退職した場合、給与を受け取る権利はありません。この場合、同じ職場の他の労働者も休暇を取ることができますが、給与は両者間で合意した額で支払われますが、最低賃金を下回ることはできません。同様の規定は、天災などにより休暇を取る労働者にも適用されます(第99条第3項)
Q49.
労働者の解雇は、ベトナム労働法(45/2019/QH14)124条4項にて懲戒処分の1類型として定められています。同法では懲戒解雇が最も重い処分として位置づけられており、戒告、6か月以下の昇給の停止、降格措置に次ぐ処分とされています。
このように懲戒解雇は労働法における懲戒処分の中で最も重い手続であるため、法125条により、懲戒解雇が認められる類型が定められています。営業秘密もしくは技術秘密を漏らす行為、使用者の知的財産権を侵害する行為、または使用者の財産、利益に関して重大な損害を与える行為、または特に重大な損害を与える恐れのある行為、または職場におけるセクシャルハラスメントを行った従業員就業規則に定めがあること。 (第 125 条第 2 項);昇給期間の延長や降格などの懲戒処分を受けたが、懲戒処分が解除されないまま違反行為を繰り返した従業員。 再犯とは、従業員が懲戒処分を受けたにもかかわらず、規則に従って懲戒を受けなかった違反行為を繰り返す場合を指します(第 125 条第 3 項)。正当な理由がなく、または特別な事情に該当しない場合に、自主退職した日から30日以内に累計5日、または365日以内に累計20日を経過した場合に解雇が認められます。規律の一形態として適用されます。(第125条第4項)。
懲戒解雇の手続については、法125条及び政令(145/2020/NĐ-CP)に定められています。政令 145/2020/ND-CP の第 70 条は、懲戒処分による解雇の処理手順を規定しており、雇用主は解雇の理由を証明する責任があります。職場労働団体の代表や労働者の代表も交えた検討会議を開催する。この評議会を組織するには、労働者は労働団体の代表事務所または代理人に通知しなければならず、議論は議事録に記録され、参加者が署名する必要があります。
懲戒解雇後の労働者の権利については、年次有給休暇を未消化の者は、法113条により年次有給休暇の残日数を金銭評価し、賃金として清算することができます。 また、使用者は労働者に対して社会保険手帳やその他福利関係書類を返還する義務を負い(法48条3項)、これらの手続を労働契約解除日から14日以内に終える必要があります。なお、懲戒解雇の場合は、解雇手当を支払う必要はありません(法46条)。
Q50.
ベトナムの社会保険制度は、社会保険法(58/2014/QH13)3条1項に定められているように、拠出保険料に応じた労働者の疾病、妊娠出産、労働災害、職業病、定年退職、死亡などにより減少し又は失われた収入の全部又は一部を補償する制度として考えられています。また、ベトナムには2種類の社会保険制度があり、強制加入と任意加入とに分かれています(法4条)。強制加入社会保険が対象とする範囲は、疾病、妊娠出産、労働災害、職業病、退職、遺族保険挙げられており(同条1項)、任意加入社会保険では、退職、遺族保険が別途用意されています(同条2項)。
強制加入社会保険は、労働者及び使用者の加入が予定されており(法3条2項)、その保険料率は、関係諸法令をまとめると次の表のとおりです。なお、この表で示されている労働者とはベトナム人労働者であり、外国人労働者には別の保険料率が設定されています。
※こちらの表は横スクロールしてご覧ください
雇用者 | 労働者 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
社会保険 | 職業病 | 失業保険 | 健康保険 | 社会保険 | 職業病 | 失業保険 | 健康保険 | ||
遺族 | 疾病 | 遺族 | 疾病 | ||||||
14% | 3% | 0.5% | 1% | 3% | 8% | - | - | 1% | 1.5% |
21.5% | 10.5% | ||||||||
合計:32% |
外国人労働者については、政令(143/2018/NĐ-CP)2条1項により、ベトナム政府から発行された労働許可証(ワークパーミット)、実務証明書、実務許可証を保持しており、ベトナムにおいて1年以上の雇用契約又は無期限労働契約を締結している外国人労働者は、この強制加入社会保険への加入が義務付けられています。下記の場合を除きます
社内異動者については、ベトナムに現地拠点を有している海外企業の管理者、CEO、専門家、技術者である必要があり、当該ベトナム拠点への異動が一時的である上、当該海外企業が12か月以上の期間で雇用している必要があります。
外国人労働者に対する保険料率については、次のとおりです。
※こちらの表は横スクロールしてご覧ください
雇用者 | 労働者 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
社会保険 | 職業病 | 失業保険 | 健康保険 | 社会保険 | 職業病 | 失業保険 | 健康保険 | ||
遺族 | 疾病 | 遺族 | 疾病 | ||||||
– | 3% | 0.5% | – | 3% | – | - | - | – | 1.5% |
6.5% | 1.5% | ||||||||
合計:8% |
任意加入社会保険は、上記のとおり退職、遺族保険に備えた社会保険であり、加入者は、自己の状況に応じて納付金額や納付方法を選択することができます(社会保険法3条3項)。
Q51.
ベトナムの労働組合の関連法として、2013年憲法、労働組合法(No.12/2012/QH13)、労働法(No.45/2019/QH14)と政令No. 191/2013/NĐ-CP、政令No.43/2013/NĐ-CP等が規定されています。労働組合は、労働組合法6条2項において、定款に基づき組織、活動する旨規定されていますが、この定款に相当するのは、主に2013年7月30日付けベトナム労働総同盟より公布されたベトナム労働組合の定款となります。
なお、企業内における労働組合の設置については、労働法170条1項及び労働組合法5条1項により、労働者の選択により設置するかどうかが決定されることとなり、企業側に設置の義務は課せられていません。また、企業内における労働組合設置について、当該労働者らに対する援助等を行うのは上級の上級労働組合とされており(労働組合法17条)、設立手続についても企業側に特定の義務が課せられるものではありません。
労働組合設立後は、労働組合の権利及び責任として、労働組合は企業の賃金体系や就業規則等の運用について監視を行い(労働組合法10条3項)、使用者との労働紛争について協議し(同条4項)、ストライキを組織し指導する(同条10項)など、労使間の紛争について参加し、紛争協議を行う各種権利及び責任を有することとなります。特に企業内の労働組合が組織された場合、当該企業は、政令(191/2013/NĐ-CP)4条により労働組合費を負担しなければならなくなる点に注意が必要です。また、これら労働組合が企業に対して行う各種権利行使や義務履行において、企業がこれに応じない場合、政令(88/2015/NĐ-CP)などにより、使用者に対する罰則が科せられる可能性があります。例えば、労働組合からの情報提供に応じない場合、50万VNDから100万VNDの罰金が規定されています。
Q52.
1. ベトナム知的財産法制度について
ベトナムが加盟している主な条約には、ベルヌ条約、パリ条約、TRIPS協定、マドリッド協定、特許協定、そして最近知的財産に関する新しい規則を導入したハーグ協定などがあります。現在、ベトナムでは、知的財産法は統合文書 No. 11/VBHN-VPQH に準拠しています。法令面においては、知的財産法として工業所有権(発明、商標、工業意匠、回路配置利用権、実用新案、地理的表示、商号及び営業秘密などが保護の対象とされています。)、著作権、植物品種権が含まれます。
2. 工業所有権
※こちらの表は横スクロールしてご覧ください
対象 | 形式審査期間 | 実体審査請求の要否 | 実体審査請求 | 実体審査期間(法119条2項) | 公開(法110条) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
①発明 | 特許 | 登録出願日から1か月以内に審査 (法119条1項) | 要 | 実出願日等から42か月以内 | 法113条 | 公開前請求については公開日、 公開後請求については 請求日から18か月以内 (a) | 出願日等から19か月又は請求後(1項) |
- | 実用新案 | 要 | 出願日等から36か月以内 | ||||
②工業意匠 | 否 | - | - | 公開日から7か月以内(c) | 形式審査後2か月以内 | ||
③半導集積回路の回路配置 | - | - | - | *実体審査なし(法114条2項) | 原則2か月以内 | ||
④商標 | 否 | - | - | 公開日から9か月以内(b) | 形式審査後2か月以内 | ||
⑤商号 | - | - | - | - | - | ||
⑥地理的表示 | 否 | - | - | 公開日から6か月以内(d) | 形式審査後2か月以内 | ||
⑦営業秘密 | 否 | - | - | - | - |
3. 著作権および著作権に関わる権利
ベトナムにおける著作物は、内容、品質、形態、手法や言語を問わないものの、模写などではなく作成者により創作的に表現されたものを指し、無方式で発生する点に特徴があります(法14条1項)。創作性を欠く場合としては、例えば、工程、システム、操作法、定義、原理や統計などが挙げられます(法15条3項)。ただし、科学的な研究の成果として操作法や定義を行った場合は、著作物として保護が及ぶ余地があります。著作物該当性に関する具体的判断基準は明記されていませんが、講演やプレゼンテーション、音楽や建築、美術作品(応用美術含む。)などは、著作物の対象となり得ると考えられます。もっとも、著作権の任意による登録制度も用意されており(法50条1項)、著作権証明書発行に合わせて、著作物性の判断結果を知る契機となる点に利便性があります。なお、2019年においては7392件の証明書が発行されています。
著作物の創作者たる著作権者には、著作権及び著作者人格権が認められます。
著作権の内容は、二次的著作物の創作、公衆への実演、複製、著作物又は複製物の頒布、有線又は無線の方法による技術的手段を利用した公衆への伝達、映画の著作物又はコンピューター・プログラムの原本又は複製物を貸与する権利(法20条)で構成されます。
著作者人格権は、題号指定権、氏名表示権、公表権、同一性保持権(法19条)などが認められています。公表権を除けば、これら著作者人格権は無期限に保護されます。公表権及び著作権については、原則として著作者の死後50年間保護が及びます。(第27条第2項b点)保護期間の例外として、映画、写真、美術及び匿名の著作物については公表から75年間保護が及び、匿名の著作物を除くその他著作物については25年以内の公表がない場合は固定から100年間保護が及びます。(第27条第2項)
著作者隣接権は、実演、録音、録画、放送番号、暗号化された番組を送信する衛星信号に係る組織又は個人の権利と定義され(法4条3項)、実演者の権利(法29条)、レコード制作者の権利(法30条)、放送組織の権利(法31条)が著作者隣接権の節に定められています。この隣接権は、これら衛星信号が著作権を害することなく固定された時点で発生するとされています(法6条2項)。
著作者隣接権の保護期間は50年ですが、それぞれ起算点が異なっています。実演家の場合は、実演固定時を起算点とし(法34条1項)、レコード制作者の場合はレコード公表又は公表されていない場合は固定時を起算点とし、放送組織の場合は放送後を起算点としています(法34条3項)。
4. 植物品種権
植物品種権として法的保護が及ぶのは、育成され、又は発見及び開発された品種かつ農業地方開発省が発行する保護対象種の一覧に属する品種であって、新規性、識別性、均一性、安定性及び適正名称を有するものとされています(法158条)。
このような品種のうち、樹木及びつる植物には25年間、その他の品種には20年間の保護が登録日を起算点として与えられますが、更新は認められていません(法169条2項)。
5. 侵害対応
侵害への対応については、行政対応と司法対応とに大きく分かれ、行政対応においては、税関を除けば、監査機関、警察庁、市場管理局や人民委員会がこれを管轄しています。これら機関は必要に応じて保全措置を講じ、行政罰などの行政処分を行います。輸出入においては税関がこれを管轄し、知的財産権国境管理措置が講じられます(法200条)。
司法対応においては、民事上又は刑事上の責任追及を行い、民事上では賠償請求をはじめとして侵害物の廃棄など侵害停止措置(法202条)等の請求を求めることになります。もっとも、民事司法上の対応については2006年から10年間の間で168件が受理されたにとどまり、活発な活用実態があるとは必ずしも言い切れない点が指摘されています。
Q53.
ベトナム知的財産法統合文書2022によると、特許は、自然法則を応用して特定の問題を解決するための製品またはプロセスの形態である技術的解決策です(統合文書第11号の第4条第12項)。特許は、ベトナムにおける知的財産権で保護される対象の一つです(第3条第2項)。特許庁から特許権が付与されると、国家によって保護されます。特許が新規性、創造性、産業上の利用可能性の条件を満たす場合、特許権が付与されます(第58条第1項)。特許として保護されない対象は、統合文書第11号の第59条で規定されており、これには発明、科学理論、数学的方法、情報の表現方法、審美的特性のみを有する解決策、植物品種、動物品種、微生物学的方法ではない植物・動物の生産方法、そして人や動物の予防、診断および治療方法が含まれます。
新しく国家によって規定された法人および個人のみが特許保護の申請を行う権利を有します。統合文書第11号の第86条第1項に基づき、知的所有権に関する規則により、特許保護の申請を行う対象は以下の通りです。
また、複数の組織や個人が共同で特許、工業意匠、レイアウトデザインを創出したり、その創出に投資したりする場合、関係する各組織や個人はそれぞれ登録する権利を有し、その登録は全ての関係者の同意を得た場合にのみ行われます(第86条第2項VBHN文書11号)。
上記に規定された登録権利を有する者は、申請書を提出する場合を含め、法律の規定に従って、書面による契約の形で登録権利を他の組織または個人に譲渡する。 (VBHN No.11、第 86 条第 3 項)。
特許権の保護期間は、登録日から保護が開始し、出願日から20年まで保護されます(法93条2項)。特許を維持するには、特許所有者はその有効性を維持するための料金と手数料を支払わなければなりません。保護期間の延長や更新の手続きはなく、期間満了により特許権の保護は消滅します。(第94条第1項)。
特許出願は、出願日から 19 か月目、または優先権を有する出願の場合は優先日から、または出願人の要求に応じてそれより早い時期に公開されます (第 110 条第 2 項)。四十二ヶ月以内に、特許出願日または特許優先権の日から計算して、特許出願者または第三者は、特許所有権を管理する国家機関に対して、出願内容の審査を請求することができるが、出願内容の審査料を支払う必要がある (第 113 条第 1 項)。出願から18か月以内に審査を終えることとされています(第119条第2項a点)。
特許作成者は、直接的に産業所有物を創造した人物です。2人以上が共同で創造した場合、彼らは共同作成者と見なされます(第122条第1項)。また、法律はこの規定の第2項で特許作成者の人格的権利を定めています。特許作成者は、特許証書、有用性解決特許証書、工業デザイン特許証書、集積回路レイアウト設計登録証書においてその名前が記載されることを保証され、また、自身の特許に関する公表文書や紹介文書でその名前が明記される権利を有します。
特許作成者の財産権は、特許法第135条に基づき、以下のように定められています。特許所有者は、特許作成者に対して合意に基づいて報酬を支払う義務があります。しかし、合意がない場合、特許の利用により特許所有者が得た税引前利益の10%および特許使用権を譲渡するたびに特許所有者が受け取る総額の15%が、特許作成者に支払われます(第1項)。特許が科学技術課題の結果であり、国家予算からの資金で実施された場合、特許作成者には、税引前利益の10%から15%および特許使用権の譲渡に伴う各支払いの総額の10%から20%が支払われます(第2項)。共同特許の場合、特許作成者間で報酬について個別に合意します。
特許登録後、特許の使用には、保護された製品の製造、保護されたプロセスの適用、輸入、利用、流通、広告、販売、保管、保護された製品または保護されたプロセスに基づいて製造された製品の流通に関わることが含まれます (知的財産法第124条第1項)。工業所有権対象の所有者および地理的表示を使用または管理する権利を付与された組織または個人は、他人による工業所有権対象の使用を禁止する権利を有します(第125条第1項)。
特許権の譲渡契約やライセンス許諾契約は、書面で契約を締結する必要があり、それぞれ契約内容が法定されている上、関係省庁に登録しなければ効力を有さない点に注意が必要です(148条2項)。
Q54.
ベトナムでは、特許は通常の知識ではない新規性と産業上の利用可能性を満たす場合、特許という形で保護されます(統合文書第11号の第58条第2項)。
特許は、発行日から効力を持ち、出願日から10年間有効です(統合文書第11号の第93条第3項)。
特許要件を満たす場合であっても実用新案の登録申請を行う場合もあり、例えば技術の陳腐化との関係で特許における20年間の保護までは不要である場合などが典型的です。また、実用新案の実体審査請求の期限は出願日から36か月であって、特許の42か月と比べて短縮されています(法113条2項)。さらに、保護期間については、実用新案は登録日から保護が開始され、出願日から起算して10年まで保護されますが(法93条3項)、特許の場合は出願日から20年までであるといった違いがあります。
Q55.
ベトナムにおける著作権は、統合文書 No. 11/VBHN-VPQH 知的財産法によって保護されています。作品は、あらゆる媒体または形式で表現された文学、芸術、科学の分野の創造的な成果物として定義されます(VBHN 第 4 条第 7 項)。ベトナムの著作権の特徴は、著作権で保護される作品には応用芸術が含まれなければならないという明確な規定である(VBHN第14条第1項)。
著作権は第 18 条で規定されています。作品の命名、実名表示、公表、同一性保持の権利は、第19条に著作者人格権として規定されています。著作者人格権を構成するものとして、著作物命名、実名等表示、公表、同一性保持権が定められ(法19条各項)、財産権としての著作権を構成するものとして、二次的著作物の創作、公衆への実演、複製、原本及び写しの頒布、有線又は無線による電子情報ネットワーク又は技術的手段による公衆伝達、映画又はコンピュータプログラムの原本又は写しの貸与権が規定されています(法20条1項)。
著作権に関連する権利とは、演奏、録音、放送、衛星放送に関する組織や個人の権利を指します(第4条第3項)。これは、実演家の権利(第29条)、レコード製作者の権利(第30条)、放送機関の権利(第31条)などが含まれます。これらの著作隣接権は、衛星信号が固定されたときに発生し、著作権を侵害しないことが条件です(第6条第2項)。
なお、著作者人格権のうち、出版権以外の人格権は、依然として実際に創作行為を行った者に帰属します。 このため、例えば従業員に業務を遂行させる場合には、その業務に係る契約書や就業規則を事前に従業員向けに作成し、少なくともその権利を行使しない旨の条項を盛り込む必要があります。
著作者に関連する権利の保護期間は一般的に50年ですが、各権利の開始時期は異なります。具体的には、作曲者の場合、保護の開始は作曲が確定した時点からです(第34条第1項)。録音製作者の場合、保護の開始は録音が発表された時点または未発表の場合は録音が作成された時点からです(第34条第2項)。放送機関の場合、保護の開始は放送が行われた年の次の年からです(第34条第3項)。これらの著作隣接権は、公開権を除き、無期限で保護されます。
一般原則として、公開権および著作権は、著作者の死後50年間保護されます(第27条第2項b)。ただし、映画、写真、美術作品、匿名作品に関しては、発表後75年間保護され、その他の作品に関しては、未発表で25年以内に発表されなかった場合、発表後100年間保護期間が延長されます(第27条第2項a)。
著作権侵害行為については、法28条に8の侵害行為が規定されており、その中には複製行為や、公表、流布行為、貸与行為、著作物保護のための技術的方法を故意に取り除き又は無効化させることなどが規定されています。著作権侵害については、知的財産権に対する保護一般と同様に、損害賠償請求、差止請求、行政への保護要請などが認められており(法198条)、一部侵害行為に対しては刑事罰も課されます(刑法(100/2015/QH13))。
著作権の利用や処分については、譲渡やライセンス契約がありますが、いずれも書面による必要があり、契約内容について法定されています(法46条、47条、48条)。
著作者隣接権については、実演、レコード、放送番組及び暗号化された番組を搬送する衛星信号が、著作権を害することなく定着された瞬間に発生すると定められています(法6条2項)。また、著作権と同様、法35条に11の侵害行為が定められており、実演者、レコード制作者、放送組織の許可なしに隣接権対象物を複製、修正、変更等を行ったり、無断で公表や公衆に伝達する行為は侵害行為とされています。
Q56.
所有権を保護する必要がある場合、国家機関は臨時の緊急措置、知的財産権に関連する輸出入品の監視措置、行政罰金の処罰を適用することができる(VBHN第199条第2項)。
民事および刑事救済は裁判所の管轄下にあり(第 200 条第 2 項)、行政救済は監査機関および警察庁、市場管理局、人民委員会などによって処理されます。(第200条第3項)。行政対応には輸出入における水際措置も別途定められており、これは税関の権限に属するとされています(第200条第4項)。
民事上の救済には、損害賠償の請求(第 202 条第 4 項)が含まれます。侵害作品の取り扱いを強制する(第 202 条第 5 項)。その他、侵害行為の停止の強制、公的謝罪の強制、民事上の義務の履行の強制などの規定も含まれます。ところが、知的財産権の侵害に対する民事的救済の実例は少なく、民事訴訟等を通じた権利保護の実現には慎重な検討が必要となります。
刑事罰についても知的財産侵害者に対する規定が設けられていますが(法212条)、こちらも実効性としては過去の実績件数から慎重な検討が必要です。
さらに、行政違反処理に関する法律第214条に基づいて、知的財産権に関する違反も処罰措置と被害回復措置が適用されます。
Q57.
工業所有権の使用権を譲渡する契約は、ライセンス契約とも呼ばれ、使用を許可される者の権利範囲に応じて、次の3種類に分類されます。
ベトナムでのライセンス契約に関する主な注意点は次のとおりです。
まず、契約の形式に関する要件です。知的財産法第 141 条第 2 項第 11 号に基づき、工業所有権対象物の使用に関する契約は書面によるものでなければなりません。
第二に、契約の有効条件および工業所有権対象物の使用契約の有効性は、第 3 条第 1 項の規定に基づいて定められた工業所有権の種類に関する当事者間の合意によるものとします。
上記の種類の工業所有権の場合、工業所有権の使用権を譲渡する契約は、工業所有権に関する国家管理機関に登録されている場合にのみ有効です。
第三に、条件は第三者に対して有効です。商標使用契約を除き、工業所有権オブジェクトを使用する契約は、工業所有権を国家管理機関に登録する必要があります。知財第11号第148条第3項)
最後に、契約の終了時期や効力の消滅時期は、当事者間の合意に基づいて決定されます。ただし、もし移転を受けた特許権が終了した場合、特許所有対象物の使用契約も自動的に終了します。
Q58.
外国企業がベトナムでの事業を撤退する場合、その企業は破産状態にある場合は破産手続きを、破産状態でない場合は解散手続き(自己解散/強制解散)または株式/所有権の譲渡手続きを行うことができます。
破産:ベトナム社会主義共和国の領土内に設立された企業および協同組合の破産を解決する場合には、破産法が適用されます。破産手続を行う場合は、最終的に裁判所による破産宣告を経て企業登記が抹消されます(法109条2項)。
破産状態にはない企業の撤退については、企業法(59/2020/QH14)及び関連政令等に従って解散手続を行い、法人債務の弁済、残余財産の分配手続を経ることとなります。
株式/所有権の譲渡:会社の株式および所有権の譲渡手続きは、企業法(59/2020/QH14)および関連する政府の規定に従って行われます。
Q59.
撤退の対象となる法人の種類や定款の定めにより譲渡制限や譲渡手続が設けられている場合があります。
株式や持分を譲渡する方法によるベトナム事業からの撤退は、法人は存続し続けるものの、株式や持分の譲渡方法につき、法人の種類ごとに手続が異なるため、対象となる法人の種類に応じた手続を踏む必要があります。また、定款において手続が修正されていることもあるため、対象会社の定款を確認することが必要です。なお、株式や持分の譲渡については主に企業法(59/2020/QH14)が定めています。
2 名以上の社員を有する有限責任会社における出資の譲渡は、2020 年企業法第 52 条に規定されています。 2 名以上の社員を有する有限責任会社の社員は、資本金の一部または全部を譲渡する権利を有します。他者への資本貢献は、次の規制に従う必要があります。
なお、持分譲渡者は、当該持分を譲り受けた第三者が社員登録簿に記載されるまで、依然として会社の社員として権利義務を負うこととなります(第52条第2項)
一人社員有限責任会社における出資の譲渡は、2020 年企業法第 77 条第 5 項で規制されています。ただし、一人有限責任会社において社員総会を設置している場合は、社員総会出席社員の出席議員の75%が賛成、または出席議員の総投票数の75%以上が賛成(第80条第6項)
株式会社における株式譲渡については、企業法111条1項d)により自由譲渡が原則とされています。この例外として、発起株主が企業登記証明書(ERC)取得日から3年間は自己の持株を、発起株主でない者へ譲渡できますが(第120条第3項による)。この場合、株式の譲渡について、株主総会において、議決票総数の51%または定款に定める割合の株主が出席したうえ、出席株主の51%による賛成決議が必要となります(法120条3項、148条)。この場合、譲渡株主は議決権がありません(法120条3項)。
2020年企業法によると、企業法の親会社と子会社のグループ内の企業間の株式譲渡の定義は、親会社が定款資本または普通株式の総数の 50% 以上を所有していることです。その会社の取締役会の過半数または全員、ディレクター、またはゼネラルディレクターを任命することを直接的または間接的に決定する権利を有します。その会社の憲章の修正および補足を決定する権利を有します。 (第195条)
第195条第2項によると、2020年の企業法は、子会社が親会社の株式を購入し、子会社間で株式を購入することを禁止しています。
株式譲渡の手続については、企業法第 127 条第 2 項に、契約による方法と株式市場での取引による方法の 2 つが規定されています。契約に基づく譲渡の場合、譲渡文書には譲渡人および譲受人、またはその権限のある代理人が署名する必要があります。株式市場での取引の場合、証券法の規定に従って注文・振替手続きが行われます。
Q60.
会社の清算手続については、企業法(59/2020/QH14)207条に解散事由を定めており:
企業は、すべての債務およびその他の財産上の義務の支払いを保証し、裁判所または仲裁で紛争を解決する過程にない場合にのみ解散できます。
2020年企業法第211条第1項によると、企業の解散が決定された場合、企業および企業の経営者は以下の活動を行うことが厳しく禁止されています。
解散決議後は、解散に関する通知手続に移行します。解散決議が行われると7営業日以内に、企業登記機関、税務機関、労働者へ決議の議事録が送付され、解散決定が国家企業登記ポータル上に掲載される必要があり、企業が未払債務を負う場合は、債務弁済実施計画案を添付の上、各債権者及び利害関係者に債権者指名、住所、債務額弁済期限、弁済地及び弁済方法などを送付しなければなりません(法208条3項企業法 2020)。
各利害関係者等への通知を経た後は清算手続に入りますが、企業債務の弁済について企業法が優先順位を設けている点に注意が必要です。2020 年企業法第 208 条第 5 項により、企業債務の支払い順序は、法律の規定に従って給与債務、退職金、社会保険、健康保険、失業保険を返済すること、および従業員のその他の権利を支払うこととされています。労働協約および署名された労働契約書に従う。 次に税金の負債です。債務弁済が終了し、なお残余財産がある場合、株式や持分割合に応じて企業出資者への分配が行われます(法208条6項)。 また、債務弁済後は5営業日以内に企業登記機関に対し、解散申請書を送付することとなります(法208条7項)。この申請書は、企業財産清算報告書(解散に関する通知、債権者名簿、弁済済み各租税債務、社会保険料債務を含む弁済済み債務額のリスト、企業解散決定後の労働者名簿などで構成されるもの)
なお、印鑑を公安機関により発給されている企業は、当該印鑑及び印鑑証明書を返却しなければならないため、この場合、返却に伴って交付される印鑑回収済証明書を印鑑等に代えて提出することとなります(政令78/2015/ND-CP59条5項)。
業登記機関は、解散申請書受領から5営業日以内又は当該企業の解散に関する意見又は異議が関係当事者より申し出されず、180日が経過したときは、国家企業登記データベース上の企業のステータスを解散状態に変更し、解散通知を行います(208条8項)。
企業登記証明書が取り消されたことで解散手続を行う場合、企業は取消しを受けた日から10日以内に解散決定のための決議手続をとらなければなりません(法209条2項)。決議後においては、上記の他の場合と同様の手続を辿ることとなります。ただし、対象企業の国家企業登記ポータル上のステータスは、企業登記証明書が取り消されるのと同時に解散手続中である旨表示がなされます(法209条1項)。
Q61.
ベトナムの破産手続きは破産法 (51/2014/QH13) で規制されています。 ベトナムにおける破産法に基づく手続きは、事業再構築計画の実施だけでなく、対象会社の資産の分割も目的としています。 42条2項は破産決定の要件を「会社が債務を支払うことができなくなったとき」と定めている。 企業がそのような状況に陥った場合、第 5 条の第 1 項、第 2 項、第 5 項、第 6 項に規定されている事業体は破産を申請する権利を有します。 第 5 条第 3 項および第 4 項の残りの事業体は、破産手続き開始の申請を提出する義務があります。
破産を申請する当事者は、通常、破産債務者の本社が所在する地方の人民法院に所属します(第8条第2項)。また、破産債務者が異なる地方に支店または駐在員事務所を有する場合には、地方の人民法院などに所属します。 海外に資産や不動産を所有している人、または海外で破産手続きに参加している人は、地方人民法院に訴訟を起こさなければなりません(第8条第1項)。
破産手続き開始の決定があった場合でも、会社の事業活動は停止されず、裁判官および資産管理・資産管理・清算事業者の監督を受けることになる(第47条第1項)。
また、破産手続開始決定に基づく禁止行為は、隠蔽、消失、寄付等、第48条の各項に列挙されており、 無担保補償請求の支払い(破産手続きの開始および企業の従業員への給与支払い後に生じる無担保債務を除く)。 債権を回収する権利を放棄する。 企業の資産を用いて無担保債務を有担保債務または部分担保債務に転換することは禁止されています。
撤退を検討している企業に対する破産手続きにおいては、実際の契約満期が過ぎていても、裁判所は破産申立後、破産債務者の担保の清算を一時的に停止する。破産宣告前に契約を一時停止し、各担保債権を解決する(第53条第1項)。 さらに、破産者は財産目録を作成して債権報告書を提出し、管財人は債権報告書に基づいて債権者リストを作成します(第67条)。
その後、債権者集会が招集されることになりますが、資本を撤収しようとする会社は、破産宣告の申立ての決議を請求することにより、資本の撤収がスムーズに行われます(第75条)。
Q62.
ベトナムにおける外国企業または外国人(以下、あわせて「外国商人」といいます)が設立した現地支店及び駐在員事務所の閉鎖については、政令(07/2016/ND-CP) 35条1項に定めがあり、次の場合に閉鎖することができます。
代表事務所および支店の業務終了に関するすべての書類は、政令 07 の第 36 条に規定されており、以下が含まれます。
申請書類の合法性を確認した後、許可機関は代表事務所や支店の閉鎖をそのウェブサイトで5営業日以内に公表します。
代表事務所や支店は、代表事務所や支店の本部での活動終了に関する情報を公開しなければなりません。同時に、閉鎖に関連する義務を果たさなければなりません。具体的には、契約の履行、債務の支払い(税金を含む)、および法的に定められた労働者の権利を解決しなければなりません。これらの義務は2016年7月7日の政令07/2016/NĐ-CPの第38条で定められています。
以上の手続にて駐在員事務所又は支店の閉鎖が完了しますが、一般的な商法の規定に基づき設立された駐在員事務所又は支店の手続になり、特別法に基づく場合には異なる手続が必要となるので注意が必要です。
Q63.
ベトナムにおける契約違反の処理は、主にベトナム民法(91/2015/QH13)および商法(36/2005/QH11)の一般規定に従って規制されています。
契約違反があった場合、民法は違反の程度に応じて契約条件の変更、契約の解除、または契約の一方的な終了を規定しています。また、損害賠償請求の検討も可能です。
契約締結後の履行には民法420条が適用されますが、事情の変化により契約を変更する必要があります。もし要件が満たされている場合、契約の再交渉が許可されます。
契約解除に関しては、民法第 423 条に、契約解除権を生じさせる契約違反、重大な契約違反、その他法律の規定に基づく場合を含む一般的な解除事由が規定されています。ここでの重大な違反とは、契約の目的を達成できない程度の違反を指します(第423条第2項)。なお、契約を解除する場合、第423条第1項の場合に該当するときは、解除権者は相手方に損害を賠償する義務を負いません。ただし、契約を解除する前に通知がなかった場合には、解除権者は相手方に損害を賠償する義務を負いません。契約に損害が生じた場合、契約を解除した当事者は相手方に損害を賠償しなければなりません(第423条第3項)。
このほかにも、履行遅延による契約の解除(第424条)などの措置もあります。履行不能による取消し(第425条)。契約のかけがえのない目的物が滅失または毀損した場合には契約を解除する(第426条)。このように解除権が行使されたとしても、契約は締結時から発効するものではなく、当事者は合意された義務を履行する必要はなく、ただし、違反に対する罰則、損害賠償、紛争解決に関する合意は、民法第 427 条第 1 項に従って履行されなければなりません。
一方的な契約解除は第428条に規定されており、契約上の重大な義務違反があった場合に契約上の義務の履行を解除する制度として定められています(第428条第1項)。契約の履行を一方的に解除した当事者は、直ちに相手方当事者に契約解除の旨を通知しなければならず、通知を怠ったことにより損害が生じた場合には賠償しなければなりません(第428条第2項)。
契約違反による損害賠償については、契約書に契約違反に対する罰則が定められていれば賠償請求することができますし、契約上の義務違反により損害を受けた場合にも賠償請求することができます(法第360条)。 損害賠償は物的損害と精神的損害に分けられ(第361条第2項、第3項)、損害の種類ごとに賠償請求が可能です。
上記の民法上の定めに対して、商法上の契約関係においては、違約罰及び損害賠償範囲について修正が行われています。商法301条では、違約罰の上限が不履行債務の対価の8%が限度とされており。一方、損害賠償の範囲については、第 302 条第 2 項において、損害賠償請求はマイナスの損害に限定されず、逸失利益も賠償しなければならないと規定されています。他方、損害賠償範囲については第 302 条第 2 項において 消極損害に限らず、逸失利益も請求できるとされています。
法的主張をまとめた上で、当該請求を行うために、①当事者間の交渉、②第三者(弁護士)による交渉立ち合い、③和解人による調停立ち合い、④仲裁裁判、⑤訴訟のうちいずれかの方法を選択する必要があります。①から④まで若しくは①から⑤までの選択を段階的に行うことも可能です。また、仲裁を利用する場合は、必ず当事者の合意(契約に既に定め があるか、または紛争発生後の合意)が必要とされている点にご留意ください。
Q64.
ベトナムにおける民事裁判手続は、民事訴訟法の統合文書番号 24/VBHN-VPQH に規定されています。ベトナム, 裁判所の裁判は、第一審(単に一審とも呼ばれます)と控訴審(二審)の二段階で行われます。
民事訴訟は訴訟の提起から始まります, 裁判所は訴状を受理した場合は、3営業日内に担当となる裁判官1名を指名し(法191条2項)、裁判官の指名が行われると、指名の日から5営業日内に訴状審査が行われます(191条3項)。第3項の請願を検討し、以下の決定を行った後、請願の修正および補足の要求、通常の手順に従って、または該当する場合は短縮手順に従って事件を受理するための手順を進めます。本法典第317条第1項に規定される簡素化された手続きに従うこと。請願書を管轄裁判所に移送し、事件が別の裁判所の管轄に属する場合には原告に通知し、事件が裁判所の管轄に属さない場合には、請願書を原告に返還しなければなりません (VBHN民事訴訟法第191条第3)
訴訟が受理されてから 3 日以内に、裁判官は原告、被告、代理店、組織、和解に関連する権利と義務を有する個人に書面で通知しなければなりません。訴訟が受理された場合、裁判官は受理から3日以内に、原告、被告、関連する利害関係者、機関、団体、個人に対して書面で通知しなければなりません。また、同時に検察庁に対しても裁判所が訴訟を受理したことを通知しなければなりません。裁判所は、原告が提起した訴訟に関する裁判所の受理情報を、裁判所の本部に公開しなければなりません。(第196条第1項)。事件受理通知を受領した被告は、通知受領日から15日間に答弁書を裁判所に提出しなければなりません(199条)。ベトナムの民事裁判においては、日本の民事訴訟手続と異なり、原則として裁判所による和解勧試が必要的なものとして定められています(205条)。ただし、和解はあくまで当事者による合意を基にするため、例えば当事者の一方が和解の意思がないとして和解を拒む場合、裁判所は和解ができない事件として民事訴訟手続を進めることとなります(第207条)。
訴訟審理を経た後、判決が下されますが、控訴期限は判決言渡日から15日間とされています(法273条1項)。訴訟当事者、訴訟を起こす機関、組織、または個人の代表者が裁判に出席したが、正当な理由なく裁判所が判決を言い渡すときに欠席した場合、上訴期限は判決の日から計算されます。